本年度においては、瀧口修造を中心に、日本モダニズム詩の欧米モダニズム受容の様相を明らかにした。 研究成果の具体的内容としては、2018年度日本近代文学会九州支部春季大会(2018年5月19日、鹿児島大学)において、「瀧口修造「地球創造説」論 ―ダダ受容との関わりから―」という題目で発表し、瀧口修造が、ヨーロッパのダダ・シュルレアリスムの運動に関わったトリスタン・ツァラおよびフランシス・ピカビアの作品をどのように受容し、そのことが瀧口の詩「地球創造説」にどのように結びついているのかを明らかにした。また、2018年度日本近代文学会秋季大会(2018年10月28日、岩手県立大学)において、「瀧口修造はどう書いたか─一九二七~三一年の作品の方法について─」という題目で発表し、瀧口修造が、フランスのシュルレアリストであるアンドレ・ブルトンの著作を通じて知った「自動記述」の方法を、自身の作品にどのように応用したのかについて考察した。 瀧口修造におけるダダ・シュルレアリスム受容の問題は、先行研究でしばしば言及されてきたが、その具体的状況については、あまり考察がなされてこなかった。今回の口頭発表では、瀧口が手に取ったと考えられるツァラやブルトンの著書等と瀧口の作品を詳細に比較検討することで、瀧口のダダ・シュルレアリスム受容や、そこからの展開について具体的な考察を行うことができた。また日本におけるダダ・シュルレアリスム受容を考える場合、瀧口は、その重要な紹介者の一人という位置にあるため、瀧口のダダ・シュルレアリスム受容の様相を明らかにすることは、北園克衛や西脇順三郎を含む日本のモダニズム詩人のダダ・シュルレアリスム受容を検討する上でも、重要かつ必須の作業であると考えられる。
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