最終年度である本年度は,心的数直線の型の種類と計数行為の特徴との関連を検討した。心的数直線は数と量の概念を統合した概念であり,幼児期の数量概念の実態を明らかにできる指標の一つであると考えられる。心的数直線は,数直線上で数を見積る数直線課題を用いて見積る際の方略と見積った結果を分析して心的数直線の型の特徴を分類した。計数は,皿の中にあるおはじきの数(1から10までのセット)をボードの上に置きながら数えるように指示し,計数の正誤とボードの上への置き方を分析した。 その結果,数直線の見積りの成績と計数の正誤の成績は関連することが分かった。また,心的数直線の型が直線型(順序が正しく隣り合う数が等間隔である型)である場合,計数の正誤の成績は満点に近い点数になる者が大多数であった。計数する際の並べ方について,直線型の幼児は左から右に横一列に順に並べる者が多かったが,それ以外にも,個数によって並べる並べ方を変化させるような方略をみせる幼児や,ランダムに並べて計数していく幼児も存在した。よって,色々な並べ方をしても数は数えられること,並べ方を色々な形に変形させても数量は変化しないことを理解し,自分で操作できていると考えられる。 さらに,心的数直線の型と計数行為に関しては,4ヶ月おきに3時点において調査を行った。計数の正誤の成績が上がると心的数直線の成績も上がることが分かり,1時点目では適合無(型が分類できない)になっている幼児も,2時点目,もしくは3時点目では直線型になることもあることが分かってきた。 以上の研究成果は,国内の学会発表で1件発表済みで,国際学会でも1件発表予定である。現在は論文化に向けて準備を進めているところである。
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