本研究の目的は、ケラチノサイトでのタイト結合の形成と細胞間透過性に対するEpCAMの機能を明らかにするために、Crispr/Cas9システムによりEpCAM遺伝子を破壊したケラチノサイトを作成し、申請者らが確立した三次元培養系を使って、重層化の過程におけるタイト結合形成と細胞間透過性の変化を調べることにある。研究初年度に、マウスケラチノサイト細胞株K38において、CRISPR/CAS9を使ってEpCAMの遺伝子が破壊された細胞株が1クローン得られた。しかし、得られたクローンにおけるEpCAM遺伝子配列を解析した結果、遺伝子が破壊されていないことが判明した。理由としては、Western blottingによるEpCAM蛋白発現の検出感度に問題があり、単にEpCAM蛋白の発現が低い細胞のクローン(培養細胞のクローナルバリエーションと考えられる)が得られただけであった。 そこで、Cas9発現ベクターの代わりにCas9タンパクを細胞に導入するシステム(シグマアルドリッチ社)を使ってゲノム編集を行う方法に変更した。ベクター方式によるゲノム編集の場合は、構成的にCas9が発現し、EpCAMの発現ベクター導入によるリカバリー実験に支障をきたす恐れがあり、今後の研究の進展を考えるとCas9タンパクを細胞に導入するシステムが有利である。また、遺伝子の導入法についても、リポフェクタミンから、より効率の良いNucleofection(ロンザ社の遺伝子導入装置)に変更した。さらに、これまでは薬剤選択を行わずにコロニーを拾ってきたが、薬剤選択マーカー(ハイグロマイシン耐性)の発現ベクターを同時に細胞に導入して、ゲノム編集された細胞を選択する効率を上げ、H31年度以後も引き続き本研究を継続し、研究目的を遂行する。
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