術中の褥瘡形成を予防する目的で、術中褥瘡の予測指標を作成した。指標は、傾斜のない一般術式で適応する基準指標と傾斜のある複合傾斜位の危険度を加算するための荷重リスク指標の2種類からなる。基準指標は、褥瘡形成要因を基に、手術時間、基本体位、麻酔、肥満度、年齢、輸液、血清総蛋白量、ASA分類の褥瘡発生率を算出し作成した。 荷重リスク指標は、複合傾斜位でおける体圧荷重と応力より危険値を算出した。評価は、手術体位は、長時間に同一体位を強制するため、褥瘡発生の危険率は高い傾向にあるため、最小の要因である末梢血管内圧32mmHgを基準として、荷重圧と応力よりリスク値を算定し、創傷・褥瘡・熱傷のガイドラインの基準40mmHgを取り入れ、リスク値1.3以上を最低危険域とした。活用は、術前情報より基準指標の要因項目に沿って算出したスコアと予定される最大傾斜角の荷重リスク指標の合計で評価を行うことができる。 仰臥位を基準とする複合傾斜位は、基準体位の予防策に、背部、臀部の荷重を考慮し、且つ、重点的に仙骨部(最大2.1)および、側方固定部(最大1.7)の減圧対策を講じる必要がある。砕石位を基準とする複合傾斜位は、基準体位の予防策に、傾斜側の上腕、背部、臀部の荷変化を考慮し、集中的に、仙骨部(最大3.8)、下肢(最大2.0)、傾斜側の側方固定部(最大2.6)の減圧対策が必要である。特に、砕石位、仰臥位共に、頭高位においては、リスク値が高い傾向を示すことから、高度な減圧対策が重要となる。 褥瘡発生を術前に数量化予測することにより、有効な予防対策が可能になる事が重要である。また、手術中に発生する褥瘡形成要因に常に目を向ける事により、褥瘡発生率を低下させることが期待できると考える。
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