研究課題/領域番号 |
17H07311
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
松尾 健治 熊本学園大学, 商学部, 講師 (60805175)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 組織衰退 / レトリカル・ヒストリー / 組織学習 / 紡績企業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去に成功した組織が衰退する場合、なぜどのようにして衰退するのかを解明することであり、本邦の紡績企業を対象に比較事例研究を行う。そのうち、衰退企業の事例として鐘紡を取り上げ、存続に成功している事例の代表として東洋紡を取り上げる。 上記目的のもと、本研究では研究代表者自身の鐘紡に関する過去の事例研究(松尾, 2017)で残された以下の2つの課題を明らかにする。第一に鐘紡以外の存続している紡績企業と比較して相対化することで、衰退・破綻の重要な原因を特定する。第二に鐘紡の経営者の意思決定に関する意図についての実証、分析をより精緻化していく。 本年度において、第一の課題については紡績業界に関する業界紙、二次文献などの二次史料の収集を進めてきた。第二の課題については鐘紡の一次史料にもとづく分析の精緻化、理論面での文献収集とその批判的検討、これら研究にもとづく論文執筆、学会発表を進めてきた。 特に第二の課題について精力的に研究を進め、アウトプットを出してきた。すなわち、1950年代~1980年代の鐘紡を事例として取り上げた「レトリカル・ヒストリーによる意図せざる結果についての歴史的事例研究」を執筆して学術書出版社である碩学舎の懸賞論文に応募、碩学舎賞を受賞した(2018年2月)。また、1950年代の鐘紡を事例として取り上げた“When Rhetorical History Fails to Be Accepted -A Case Study of Kanebo in the 1950s-”をブダペストで開催された学会にて発表した(2018年3月)。加えて、鐘紡に関するこれまでの研究やその他の既存研究を踏まえた理論研究として「レトリカル・ヒストリーについての試論と展望」を日本経営学会九州部会において発表した(2018年3月)。この発表の結果、部会推薦を得、2018年9月の全国大会で発表する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画で当初予定していた、東洋紡社内の一次史料閲覧・収集については、未だ実現していない。そのため、本年度は当初の計画を変更して、二次史料の収集、鐘紡の一次史料にもとづく分析の精緻化、理論面での文献収集とその批判的検討、これら研究成果にもとづく論文執筆、学会発表を優先的に進めてきた。 東洋紡社内の一次史料については、東洋紡社史編纂室のご関係者にご了解をいただいて進める必要がある。東洋紡社史編纂室と懇意にされている、さる他大学の研究者のご厚意により、東洋紡社史編纂室のご関係者をご紹介いただくこととなっていた。そのため、2017年9月、10月、11月、12月、2018年3月に、その研究者に連絡をとり、東洋紡社史編纂室との調整について確認を継続してきた。しかしながら、東洋紡社史編纂室ご関係者とその研究者の方々のご都合もあり、2017年度中は資料アクセスについて継続的な調整状況となっていた。 その後、その研究者の方のお取り計らいにより、2018年6月25日に東洋紡社史編纂室ご関係者とミーティングを持つことが決まっており、史料の閲覧・収集に向けて状況が進展している。 以上のように、当初計画していた東洋紡社内の一次史料収集については2017年度中において予定通り進まなかったものの、優先順位を変更してそれ以外の部分についての研究を進めた結果、「研究実績の概要」欄に記載の研究実績があったため、総合的に見ればおおむね順調に進展しているものと評価できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
第一の課題については、上述のとおり2017年度中には実現しなかった東洋紡社内の史料の閲覧・収集を試みる。この点に関しては、2018年6月25日に東洋紡社史編纂室ご関係者とミーティングを持つことが決まっている。今後、東洋紡の史料収集を進めたうえで、東洋紡の存続のメカニズムを分析し、鐘紡の衰退のメカニズムと比較する。 加えて、第一の課題については二次史料をもとにした分析を進めており、これまでの研究内容については、2018年6月10日に東京大学で開催される組織学会において発表する予定となっている(題目「新規事業展開の意思決定―1960年代の綿紡績企業によるナイロン企業化の事例―」)。この組織学会での発表に関しては、報告論文を提出し審査合格済みである。 第二の課題については、鐘紡に関する分析を進めており、これまでの研究内容を2018年9月に新潟国際情報大学で開催される日本経営学会の全国大会において発表する予定となっている(題目「レトリカル・ヒストリーとその失敗のメカニズム」)。3月に日本経営学会九州部会での発表後の審査で部会推薦を得たことから、この日本経営学会の全国大会での発表が内定している。 その他の研究成果について、2018年度中に海外での学会発表を検討中である。
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