開発途上国向けの省エネルギー型下水処理技術として、DHS (down-flow hanging sponge) 法が開発されてきた。本法の開発途上国現地での適応性を確認するため、2基の実規模リアクターがインドに建設され、下水処理性能評価が行われた。カルナ―ル市で行われた試験では、処理水BODが平均10 mg/Lであったのに対し、アグラ市で行われた試験では26 mg/Lと、除去性能の低下が確認された。その原因について調査したところ、保持汚泥内に粘土質 (カオリン) および重金属等の無機物質が蓄積されていることを確認し、これらがDHSリアクターの有機物除去性能に影響を及ぼした可能性があると考えた。本研究では、カオリンおよび重金属が下水処理に及ぼす影響を調査した。 前年度の研究成果より、インドの下水と同程度のカオリン濃度では、有機物除去性能を阻害する効果が確認されなかった。そのため、カオリンの影響の有無を明らかにするため、添加濃度を10倍にして試験(kln10系)を実施した。結果、何も添加しないコントロール(ctl)系の平均BOD除去率が62.6%であったのに対し、kln10系が56.9%と、BOD除去性能に顕著な差はなかったものの、カオリン添加により有機物除去率がやや低下した。 また、重金属の影響について評価するため、春、夏、秋と3つの季節(各季節の試験水温:22℃、32℃、19℃)において生分解性試験を実施した。結果、試験開始後24時間におけるCOD除去率が、重金属無添加系、添加系それぞれ95%、90%(春)、91%、59%(夏)、67%、85%(秋)と、重金属無添加系と比較して重金属添加系の除去率は低下していた。 これらの結果より、重金属およびカオリン等の複合的な要因により、インドにおいてはDHSの機能障害が生じていたことが示唆された。
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