研究課題/領域番号 |
17H07319
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
白石 希典 香川高等専門学校, 一般教育科(高松キャンパス), 助教 (00803446)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 原始重力波 / 非ガウス性 / インフレーション / 宇宙マイクロ波背景放射 / massive gravity |
研究実績の概要 |
本研究では、原始重力波のガウス性検定を通してインフレーション中に存在する粒子の個数や性質を特定し、宇宙開闢期の物理状態の正確な理解を目指している。 一般相対論にもとづく単純なインフレーションモデルでは、重力を媒介する重力子の質量はゼロであり、重力波の非ガウス性は弱く保たれる。一方で、真の重力理論の候補として現在盛んに研究されている重力子が質量を持つモデルでは、自発的対称性の破れを通してスカラー場の粒子生成が起き、そのスカラー場が重力波の非ガウス性をソースする。 1年目は、実際のCMB観測データからこのモデルで予言される重力波の非ガウス性を検証した。具体的には、WMAP衛星が観測した温度マップを用いて、重力波スカラースカラー3点相互相関関数の大きさの推定を行った。結果として有限のシグナルが検出されなかったことから、重力子の質量やスカラー場との相互作用の強さに対する新たな制限が得られた。この結果はWMAPで観測可能な大スケール領域には際立った痕跡が存在しないことを意味するが、それより小スケールには存在する可能性が依然残されており、Planckデータなどを用いたさらなる検証が必要である。なおこの仕事は、重力波スカラースカラー3点相互相関関数の推定に成功した初めて例として世界的に認められている。 また、上記の原始重力波(テンソルモード)のみならず曲率揺らぎ(スカラーモード)の統計性検定を通して他のインフレーションモデルの検証も行なっており、ソース粒子の有無に対する新たな見解を得ている。 上記の成果はすでに複数の論文にまとめ、世界に公表している。これらを今後の研究で発展させ、宇宙の初期条件に関するさらなる理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「重力子が有限の質量を持つインフレーションモデルで生成される原始重力波のガウス性検定」に関する研究は完成し、結果を論文にまとめ公表した。また、他のテーマに関する研究も遂行し、それらも論文として発表済みである。さらに、次年度行うプロジェクトについてもすでにいくらか進めている。上記の進捗状況から、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、近年考え出されたSU(2)ゲージ場と結合を持つアクシオンの存在するインフレーションモデルに注目し、原始重力波のガウス性検定を行うことで、そのモデルの正当性を評価する。 まず、先行研究をもとに、このモデルにおける原始重力波から生成されるCMBバイスペクトルやCMBミンコフスキー汎関数の理論計算を行う。ここでは、温度、Eモード偏光とともに、Bモード偏光も考慮する。次に、WMAPやPlanckなど現在までのCMB観測実験やLiteBIRDなど次世代CMB観測実験において得られるシグナルノイズ比を正確に推定し、このモデルの検証可能性を議論する。さらに、この結果がポジティブなものであり、またさまざまな条件が整っている場合には、WMAPやPlanckなどの観測実験で実際に得られたデータを用いて、SU(2)モデルの妥当性評価にも挑戦したい。これらの結果から、インフレーション中におけるSU(2)ゲージ場やアクシオンの有無を議論し、論文として発表する。 以上のテーマをメインで行うが、他のテーマにおける進行中の研究プロジェクトも同時に進め、また、随時新たなテーマにも挑戦し、各々の完成を目指す。
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