本研究では、原始重力波のガウス性検定を通してインフレーション中に存在する粒子の個数や性質を特定し、宇宙開闢期の物理状態の正確な理解を目指している。 アクシオンは超弦理論などで自然に発生する粒子であり、インフレーション中にアクシオンが存在し宇宙論観測量に影響を及ぼす可能性が指摘されている。アクシオンはゲージ場との相互作用やChern-Simons重力相互作用を通してノンガウシアンでパリティの破れた重力波を生成する。 2年目はまず、後者のChern-Simons重力相互作用から生じる原始重力波をソースとする宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の3点相関の理論解析を行った。先行研究によって重力波重力波スカラー3点相互相関に特徴的なシグナルが現れることが知られていたが、CMB温度場(T)またはEモード偏光場(E)とBモード偏光場(B)の3点相互相関(BBT、BBE)がそのシグナルの最もクリアな観測量となることを、本研究で発見した。これまでの2点相互相関(TB、EB)を用いた解析ではわからなかった情報にもBBT、BBEを使えばアクセスできることが明らかとなり、アクシオン探査や重力波パリティの検証に関する新たなアプローチを提案した。 一方、前者のゲージ場との相互作用から生じる原始重力波に関する研究では、SU(2)モデルを始めとした様々なシナリオにおける重力波2点相関を計算し、特定の場合にCMB2点相関(BBなど)に非自明な振動が乗ることを発見した。これは、CMB3点相関(BBBなど)でも期待されることであり、今後の研究によって明らかにしていく。 この他のテーマに関しても、理論、観測双方から研究を進めており、ソース粒子の有無に対する新たな見解を得ている。これらの成果はすでに複数の論文にまとめ、世界に公表している。これらを今後の研究で発展させ、宇宙の初期条件に関するさらなる理解を目指す。
|