研究課題
がん細胞の目印である抗原を投与し、免疫細胞を抗原特異的に活性化させるがん免疫療法は、副作用が最小限のがん治療法として注目される。抗原は、生体内での安定性が低く、投与後速やかに消失する。この課題を克服するには、血中滞留性の向上に実績がある脂質二重膜 (リポソーム)への抗原係留が有効であるため、タンパク質への係留部位 (脂質) の導入を本研究では行なっている。抗原は、その高次構造が免疫細胞の認識に重要であるため、変性しない条件で部位特異的に脂質修飾を施す必要がある。そこで本研究では、架橋酵素トランスグルタミナーゼ (MTG) の触媒機能と、その人工基質となる独自の両親媒性脂質化ペプチドを用いて、部位特異的抗原脂質化技術を確立している。本年度の脂質化ペプチドの分子設計においては、MTGが塩基性アミノ酸に囲まれたKを認識することに着目し、親水性のRHK基質配列にのみG3Sを介して脂質を融合して両親媒化することで、脂質化ペプチド基質の水への溶解性向上およびMTG反応性のさらなる向上に成功した。この独自設計の両親媒性脂質化ペプチドは、MTGが認識可能なQを融合したモデル緑色蛍光タンパク質 (LLQG融合GFP) に対して高効率に (80%以上) 脂質化ペプチドが修飾される。上記脂質化ペプチドをMTG反応でLLQG融合GFPにラベルして得た脂質化GFPは、細胞膜と相互作用させて、細部膜への係留能力を評価した。細胞膜表面へEGFPの蛍光が観察され、特に蛍光が明瞭となったのは、アルキル鎖長の長いC18、嵩高いコレステロールを修飾したGFPであった。上記の新規ペプチド (lipid-G3S-RHK)Sを用いてラベルした脂質化タンパク質は、生体内での安定性をvivo実験で検証する段階にまで至っている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemistry A European Journal
巻: Accepted ページ: Accepted
10.1002/chem.201900370.
ACS Applied Bio Materials
巻: 1 ページ: 1823-1829
http://dx.doi.org/10.1021/acsabm.8b00271