本年度は、「Bianchi-Baecklund変換の更なる解析」を目標とした。Bianchi-Baecklund変換は、複素接線叢による平均曲率一定曲面(CMC曲面)の変換であるが、一方で「球叢によるCMC曲面の変換」であるDarboux変換と一致することが知られている。近年、Darboux変換については、CMC曲面だけでなく、双等温曲面やWillmore曲面などの様々な曲面のクラスに対し、ゲージ理論や平坦接続の手法を用いた研究が進められている。先行研究においては、「古典的なBianchi-Baecklund変換とDarboux変換」、「Darboux変換と単純ドレッシング」の同値性がそれぞれ別の論文内で証明されている。 本研究では、まず昨年度までの研究成果をより具体的に考察するため、「古典的なBianchi-Baecklund変換と単純ドレッシング」の同値性を、直接的に証明する別証明を与えた。この結果により、昨年度の研究対象であった「sinh-Gordon方程式のポジトン型解」と「ポジトン型CMC曲面のextended frame」のパラメータ対応の考察が可能となった。 さらに、昨年度までの研究成果を別の手法であるDarboux変換の立場から研究し、ポジトン型CMC曲面の「平坦接続」や「平行ベクトル場」の存在を証明し、定式化した。この研究は、平均曲率一定曲面より広い双等温曲面のクラスへと拡張でき、ポジトン型双等温曲面の構成にも至った。将来的には、Willmore曲面といった別のクラスへの拡張も期待される。 当初の目標であった「CMCトーラスの構成」は本研究期間中には達成できなかったが、特殊なBianchi-Baecklund変換による「ポジトン型解」を構成し、新しい曲面の構成を行った。ポジトン型解の性質は未解明な部分が多く、今後も研究を続け、詳しい性質を明らかにしていきたい。
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