研究課題/領域番号 |
17H07326
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
大槻 知世 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (30805205)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 津軽方言 / 対格 / DOM / 談話資料 |
研究実績の概要 |
本研究では、青森県西部の津軽方言の多様な対格形式(目的語標示形式)の仕様の動機を究明することを目的としている。当該年度に実施した研究の結果、当初7つと見込んだ多様な対格形式について、それらの形式の使用動機(使い分けの仕組み)を説明する自然な仮説を構築することができつつある。共時的には使用される環境にほとんど違いは見られないが、通時的な証拠を求めて、既存のテキスト(昔話の語りの文字起こし資料や、国立国語研究所編『日本のふるさとことば集成』など)の調査を行った。その結果、前接の名詞句の有生性や特定性に加えて、情報構造との関連で説明できる可能性が非常に高いことが分かった。 最近の方言研究、および言語研究では、ある言語において複数の対格形式がある場合、対格名詞の性質の違いによって、異なる対格形式が使われる現象、すなわち示差的目的語標示(Different Object Marking: DOM)の研究が盛んである。本研究は、情報構造、統語論といった一般的な観点から津軽方言のDOMを調査・分析した初めての研究である。 同時に、本研究では既存のテキストの調査と並行して、談話を集めて書き起こすことも行っている。これは、言語学者の間でも必要性が広く認められている、言語の記録と保存(documentation)にもつながる成果であり、多様な研究資源を保存することにもなる。本研究は、書き起こしテキスト等の成果が次の研究につながるサイクル的研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予期しなかった事情により調査が遅れていたが、本研究の主目的である対格の使用動機の解明について、必要と予想した資料の調査を終えており、結果として、使用動機に関する仮説を構築するに足る材料を相当程度集めることができている。質的にはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初予期しなかった事情により、期間的には遅れが生じているが、内容的には本研究の目的を達成するのに十分な証拠を得ることができている。今後は、こうした証拠をさらに集め、仮説を補強する目的で、調査を続ける。
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