研究課題/領域番号 |
17H07327
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
南雲 千香子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (90801613)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 法律用語 / 翻訳語 / 民法 / 箕作麟祥 / 『仏蘭西法律書』 / 近代語 |
研究実績の概要 |
本研究の目標である「明治期の法律用語の成立パターンの解明」のため、本年度は次のことを行った。 1、箕作麟祥『仏蘭西法律書 民法』で使用されている法律用語が、明治23年に公布された日本民法(旧民法)、明治29年に施行された日本民法の中でも同様に使用されているか、あるは別の用語に置き換わっているかどうかを調査し、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」、「『仏蘭西法律書 民法』のみ用語が異なるもの」、「3つの資料でそれぞれ用語が異なるもの」の3カテゴリーに分類した。 2、上記のカテゴリーのうち、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」について、さらに詳細な用語の変遷の調査を行った。その結果、①『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」、「明治民法」で共通して使用されている用語の数そのものは少ない(13語)。②『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」で共通して使用されている用語は、民法草案でも用語の変遷がほとんどなく、『仏蘭西法律書 民法』刊行後すぐに用語が固定されていた。③『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」で共通して使用されている用語について詳しく見てみると、一般語として過去に日本で使用のあった語が多いという傾向がある、ということが明らかになった。これらのことから『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」、「明治民法」で共通して使用された用語は少なかったが、これらが『仏蘭西法律書 民法』刊行以後に編纂された民法草案では同じ用語がほぼ一貫して使われていたこと、「不動産」という新漢語の定着が、他の法学資料に比べ、民法草案では早かったことなどから、『仏蘭西法律書』の影響力や日本民法編纂事業における箕作の活躍が大きかったことが窺える。(なお、この調査結果については2017年度第1回近代語学会において口頭発表を行った。) 3、自身の作業効率化及び、明治法律用語研究の進展のため、法制史資料のテキスト化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は次のとおりである。 1、本年度は当初の計画通り、箕作麟祥『仏蘭西法律書 民法』で使用されている法律用語が、明治23年に公布された日本民法(旧民法)、明治29年に施行された日本民法の中でも同様に使用されているか、あるは別の用語に置き換わっているかどうかを調査し、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」、「『仏蘭西法律書 民法』のみ用語が異なるもの」、「3つの資料でそれぞれ用語が異なるもの」の3カテゴリーに分類することが出来たため。 2、上記のカテゴリーのうち、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」のグループについては、詳細な用語変遷調査を行い、現時点での用語の傾向が掴めたため。 3、明治期法律用語研究の効率化を図るための法制史資料のテキストデータ化についても一定の成果があったため。
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今後の研究の推進方策 |
「『仏蘭西法律書 民法』のみ用語が異なるもの」、「3つの資料でそれぞれ用語が異なるもの」のカテゴリーについても詳細な用語変遷調査を行う。またその作業と並行して、法律用語から一般語としても使用されるようになったものをピックアップする。それらの語については一般語として使用されるようになるまでの過程も含めて用例の調査を行う。 また、法制史資料のテキストデータ化にしても引き続き行う。
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