本研究では、(1)rDNAの転写と共役したMukBの染色体への結合モデルの検証、(2)トポロジカル結合の分子機構の解明を通して、コンデンシンが染色体に「いつ、どこで、どのように」結合するのかを明らかにする。2018年度及び繰越後の2019年度は2017年度に準備した材料を用いてこれらの実験に取り組んだ。上記(1)(2)でも特に(2)の課題に重点的に取り組んだ。 まず課題(1)ついての結果を述べる。トポロジカル結合を検出する実験を実施したところ、実験間の定量値の振れが大きかった。そこでこれを最小にするように実験条件を最適化した。最適化を完了したところで本課題の補助事業期間が終了し、転写との共役の関係は調べられていない。 次に課題(2)の結果について述べる。精製した変異型MukBタンパク質を用いてゲルシフトアッセイ(電気泳動法を利用したDNA結合実験)を行った。基質となるDNAには、一本鎖DNA及び二本鎖DNAを用いた。22種類の変異体の一本鎖及び二本鎖DNA結合能と細胞内で染色体を正常に分配する能力を照らし合わせることで、MukBが機能を果たす上でK75及びR112の部位での一本鎖DNA結合が重要であることがわかった。更に既知の結晶構造においては、MukBホモ二量体の4残基のK75とR112は一直線上に整列していた。この結果等から、「MukBはリング内部の残基によって一本鎖DNAを認識し、安定なトポロジカル結合に移行する」という機能モデルを立てた。 (2)の課題に関して、ゲルシフトアッセイとは異なる手法によるMukBタンパク質とDNAの結合の検出も試みた。これには「原子間力顕微鏡観察法」、「部位特異的光架橋法」をそれぞれ用いて行ったが、いずれの手法でもMukBとDNAの結合を検出できなかった。これらの手法でMukBとDNAの相互作用を検出するには反応条件等の更なる検討が必要である。
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