研究課題/領域番号 |
17H07330
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
橋谷田 俊 分子科学研究所, メゾスコピック計測研究センター, 特別協力研究員 (40805454)
|
研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
キーワード | 近接場光 / キラリティ / 表面増強分光法 / プローブ顕微鏡 / ナノ物質 / プラズモン / 光学活性 / 偏光解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,対称性の高い(キラル(不斉)では無い)金属ナノ構造の近くに発生するキラルな円偏光を用いて,高感度かつ簡便なキラル分子検出法を開発することである。この目的を達成するため,次の二つの課題を実行する。(1)単一の金属ナノ構造と直線偏光で,ナノ構造に局在する円偏光電場のねじれの向きを自在に制御できることを示す。(2)制御可能な円偏光で,分子のキラリティを高感度に検出できることを示す。本年度は課題(1)に取り組んだ。長方形金ナノ構造(以下,ナノ長方形)を,その主軸に対して傾いた直線偏光で励起することにより,ナノ長方形と直線偏光を合わせた系全体の対称性を破り,円偏光電場のねじれの向きを制御することを試みた。実験では,近接場偏光解析イメージング装置を用いて,様々な方位角の直線偏光でナノ長方形を励起したときにナノ長方形の近くに発生する光の円偏光度を二次元マッピングした。その結果,ナノ長方形と直線偏光が平行な場合には,左・右円偏光が同じだけ発生しバランスするが,直線偏光を反時計回りに傾けると右円偏光が支配的になり,また時計回りに傾けると左円偏光が支配的になるという状況が実験で観測された。ナノ長方形の中心付近では,円偏光度0%の直線偏光でナノ長方形を励起しているのにもかかわらず高純度(円偏光度50%以上)の円偏光電場が発生しており,そのねじれの向きは直線偏光の向きで制御できることが明らかになった。ナノ長方形に励起されるプラズモンを振動点双極子とみなした単純なモデル計算により,実験結果を定性的かつ半定量的に再現することに成功した。モデル計算から純粋な円偏光(円偏光度100%)を発生させる条件を見出すことにも成功した。このナノ長方形に局在する制御可能な円偏光を用いれば,局在円偏光とキラル分子の相互作用に関する知見が得られ,高感度かつ簡便なキラル分子検出法が創出できると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2年計画であり,本年度に予定していた研究,すなわち単一金属ナノ構造の近くに発生する円偏光電場のねじれの制御,をおおよそ終えているため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に導入した電磁場解析ソフトウェアにより,キラル分子の検出に最適な光学特性を示す金属ナノ構造の幾何構造デザインを探索し,いくつかの有効なデザインをピックアップする。ピックアップしたデザインのナノ構造を電子線リソグラフィ,ナノインプリントリソグラフィを用いて作製し,それを用いてキラル分子の検出を行っていく。
|