研究課題
真核細胞に存在する単膜系オルガネラは、物質輸送機構「膜交通」により、タンパク質や脂質が正確に輸送・局在化される。新規オルガネラ獲得に伴い、輸送経路の開拓があったと考えられるが、その進化過程に膜交通がどのように関与したかについての知見は乏しい。本研究課題では、陸上植物の系統特異的オルガネラ獲得とその進化的プロセスに膜交通がどのように関与したかを明らかにすることを目指し、苔類特異的なオルガネラである油体を新規獲得オルガネラのモデルとして、ゼニゴケの油体発生と膜交通の関与、植物の系統特異的オルガネラ獲得の共通モジュールの解明を目指している。SYP1メンバーは、動物のSyntaxin-1のホモログであり、植物の細胞膜に局在するSNARE分子の一つであり、これ自身も分泌経路の積荷として細胞膜まで輸送される。ゼニゴケの4つのSYP1メンバーのうち、MpSYP12Bは油体細胞特異的に発現し、油体膜に局在する。今年度は、分泌経路を細胞内の構造体である油体へ輸送方向を転換させる分子の同定を目的とし、油体発生のマスター転写因子の変異体を用いたRNA-Seq解析および複数の輸送経路の可視化を行った。その結果、油体発生のマスター転写因子の下流に存在する二次代謝産物関連酵素、細胞膜局在型の膜輸送体の遺伝子群に加え、複数の機能未知の分泌タンパク遺伝子群を同定した。また、この転写発現制御下においても、液胞輸送経路を含めた他のオルガネラへの輸送は影響を受けず、分泌経路のみが一過的に輸送方向転換していることを明らかにした。これらの結果および細胞板や樹枝状体などの植物の系統特異的な細胞内構造体への輸送に関する知見から、分泌方向を転写発現を伴って細胞内方向へと一過的方向転換させることが陸上植物の新規オルガネラ獲得機構のストラテジーの1つであることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant and Cell Physiology
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