研究課題/領域番号 |
17H07343
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研究機関 | 公益財団法人世界人権問題研究センター |
研究代表者 |
杉木 志帆 公益財団法人世界人権問題研究センター, 研究第1部, 専任研究員 (00713033)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 国際人権 / 管轄 / 領域外適用 / 欧州人権条約 / 米州人権条約 / 自由権規約 |
研究実績の概要 |
今日、国際人権条約は、平時だけでなく武力紛争時においても適用されると一般的に理解される。ここから、国際人権条約は占領・軍事活動が行われている地域についても適用されるといえそうだが、実際には、国際人権条約当事国の関与の下で占領・軍事活動が行われている地域について、常に当該人権条約の属地的適用が認められてきたわけではない。占領・軍事活動が国際人権条約の属地的適用にいかなる影響を与えるのかは依然として不明瞭であり、理論的・実証的な分析が求められる。 そこで、本研究では、第一に、当事国が自国領域外で占領・軍事活動を行う場合、ついで、第二に、他国または反乱団体による占領・軍事活動の結果、当事国が自国領域の一部地域について実効的支配を失う場合、それぞれ国際人権条約の属地的適用の可否がどのように決定されるのかを検討する。このうち、平成29年度は、前者の場合についてを検討を行い、国際司法裁判所および国際人権条約の履行監視機関等の判決、決定、意見等に関する資料と、国内外の関連文献を収集・分析した。また、勤務先で定期的に開催している共同研究会において報告を行い、議論を行った。さらに、在外研究も行い、当地にて多数の国際人権法学者と意見交換を行った。これらの平成29年度の研究成果に基づき、現在、欧州人権条約の「管轄」概念の意味について論じる論文を公表するための準備を進めている。それにより、国際人権条約の属地的適用において、占領・軍事活動がいかなる意義を有するのか、その一端を明らかにできると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、研究の進捗状況にあわせて、勤務先の共同研究会において報告を行い、本研究に関する議論を行った。また、マックス・プランク研究所において在外研究を行い、多数の国際人権法学者との意見交換を行った。以上の成果の一部を研究論文として公表する準備は、概ね整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半は、他国または反乱団体による占領または軍事活動の結果、国際人権条約の当事国が自国領域の一部地域について実効的支配を失う場合、国際人権条約の属地的適用の可否がどのように決定されるのかを明らかにする。また、平成30年度後半は、平成29年度・平成30年度前半の研究成果を踏まえて、占領・軍事活動が国際人権条約の属地的適用に与える影響を包括的に分析する。 そのために、本研究では、平成29年度と同様、国際司法裁判所の判決及び勧告的意見、欧州人権裁判所や米州人権裁判所、米州人権委員会の判決及び決定のほか、自由権規約委員会や児童の権利委員会など各国際人権条約に設けられた条約履行監視機関から出された、政府報告書審査での総括所見や一般的意見、個人通報に対する見解について、引き続き調査及び分析を行う。
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