東北などの寒い地域ではイネもみ枯細菌病菌が引き起こす苗腐敗症が蔓延しているため、深刻な問題となっている。そこで、その抵抗性因子を同定し抵抗性品種の作出を試みている。これまでに、イネもみ枯細菌病菌が引き起こす苗腐敗症に対して、ひとめぼれと比較してKALUHEENATIが抵抗性を有することを明らかにしている。さらに、これらのRILを用いた解析から染色体3番にKALUHEENATI型のQTLを得ている。 今年度はそのQTLから抵抗性遺伝子を同定するために、接種後のサンプルを用いてRNA-seq解析を行った。その結果、接種後エチレンシグナリングがひとめぼれと比較してKALUHEENATIで活性化していることが明らかになった。加えて、得られているQTL内にエチレンシグナリングに関連すると思われる因子が存在していた。現在、その因子のCRISPR変異体を作出しており、種子を回収でき次第接種実験を試みる予定である。 イネもみ枯細菌病菌は苗腐敗症以外にも葉鞘褐変および腐敗なども引き起こす。穂ばらみ期に葉鞘の褐変、腐敗が引き起こされると穂が葉鞘の中で枯れる、もしくは収量が大幅に減る、お米の品質が低下するといった症状を引き起こす。そこで今年度は、私たちが有するNAM親の中から抵抗性品種の同定を試みた。その結果、ひとめぼれなど抵抗性を有する品種と弱い品種を同定した。今後そのRILを用いて抵抗性因子の同定を試みる。また、苗腐敗症と葉鞘の褐変、腐敗では抵抗性を有する品種が異なっていたため、組織特異的に抵抗性因子が存在することが明らかになった。
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