研究課題/領域番号 |
17H07347
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
山中 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10804966)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 森林性昆虫 / トラップ / 捕獲効率 |
研究実績の概要 |
森林昆虫は多様な種が含まれる分類群であり、森林生態系の維持に重要な役割を担っている。一方でトラップによる森林昆虫の捕獲には、トラップの捕獲効率が周囲の環境によって変わりやすく、昆虫の生息密度を明らかすることが困難であるという欠点が指摘されてきた。本研究ではピットフォールトラップとマレーズトラップの二つの昆虫の捕獲方法を対象とし、それぞれのトラップの捕獲効率に影響を及ぼす物理環境を明らかにする。初年度である今年度は、それぞれのトラップによる森林昆虫の捕獲調査と物理環境の調査を開始した。 ピットフォールトラップの捕獲効率の調査は10月に北海道札幌市の森林および開放地にて行った。地表性甲虫の移出入を防ぐ金属製フェンス(3m×3m)を3地点に設置し、1週間、フェンス内の地表性甲虫類の日ごとの捕獲個体数を記録した。また、この調査によりフェンス内の地表性甲虫類の生息密度が低いことが示唆されたため、来年度の調査ではより広いフェンス(5m×5m)を作成して調査を行い、季節を変えて調査することで平均気温とフェンス内の生息密度や捕獲効率との関係について検証を行う予定である。 マレーズトラップの捕獲効率調査として、北海道芦別市道有林にて、5月から8月にかけてマレーズトラップによるカミキリムシ類の捕獲を行った(全9地点)。同時にトラップの周囲にて気温と相対湿度の計測を行い、また9地点のうちの3地点では風速の計測を行った。サンプルは3週間おきに回収した。この結果、マレーズトラップにて捕獲されるカミキリムシ類の種数と個体数は、調査期間内の平均風速に対して山なりの関係を持つこと、また期間内の平均気温は種数と個体数に正の影響を与えることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度より、それぞれのトラップ(ピットフォールトラップおよびマレーズトラップ)の捕獲効率の調査を開始することができ、またマレーズトラップについては気温や風速などの物理環境と捕獲されたサンプルとの関係性について予備解析を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、それぞれのトラップの調査地点を初年度よりも増やし捕獲調査および各物理環境調査を行う予定である。これら2年間の野外調査で得られた結果をもとに、各トラップの捕獲効率に各物理環境が及ぼす影響の相対的な重要性を明らかにする。また、物理環境が捕獲効率に与える影響と捕獲効率がトラップで実際に得られる昆虫の個体数に与える影響を考慮するベイズモデルをトラップごとに構築する。
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