研究課題/領域番号 |
17H07353
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
上田 祐生 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 博士研究員 (80806638)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 溶媒抽出 / 貴金属 / イオン液体 / CO2応答性 / レアメタル |
研究実績の概要 |
溶媒抽出法は、高濃度かつ大容量の水溶液を迅速かつ連続的に処理可能であるために、産業プロセスにおいて広範に利用されている。従来の溶媒抽出法を用いた金属イオンの分離では、抽出・逆抽出の制御のために精密なpH調整が必要であり煩雑であった。 これに対し、本研究で提案する抽出系は、CO2とN2のバブリングのみにより容易に抽出・逆抽出の制御が可能であるという特長がある。さらに、抽出分離が極めて困難である、白金族金属、過レニウム酸およびタングステン酸などの希少金属アニオン種の抽出分離への適用可能性が期待される。 初年度は、アミン修飾イオン液体系による抽出系に先立ち、疎水性の有機系アミンであるN,N-ジシクロヘキシルメチルアミンそのものを有機相として用い、白金族金属の抽出挙動およびCO2応答性を検討した。その結果、初期水素イオン濃度が1M以上の水溶液から、いくつかの金属アニオン種を抽出可能であった。しかしながら、初期水素イオン濃度が3M以上で均一相になり、抽出操作が困難になるということも明らかとなった。これは、有機系アミンの疎水性が不十分であることに起因すると考えられる。 イオン液体は、用いるイオンの組み合わせで疎水性などの溶媒特性を調整可能である。本研究において合成するアミン修飾イオン液体は、抽出操作を行うために必要な疎水性とCO2・N2応答性を同時に確保可能である。したがって、本研究において提案するCO2・N2応答性抽出系を、イオン液体系により行う有意性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、CO2に対して可逆的吸収能を有するアミン修飾イオン液体のアニオン交換能を利用して、金属アニオン種の抽出を行う。CO2に応答して抽出・逆抽出を制御するためには、以下のような複合的な機能を有するイオン液体が必要である。1. CO2を可逆的に吸収し、かつ金属アニオンに対する抽出能を発現させるために、イオン液体にアミノ基を修飾する。アミノ基はCO2をHCO3-として吸収するため、アニオン交換体として機能すると考えられる。 2. 水/イオン液体の2相形成のために疎水性の高い長鎖アルキル基やアニオンを導入する。3. 粘性を低下させ、かつ金属カチオンに対する抽出能が無い、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをアニオンとして使用する。 当初の予定よりも、CO2に応答したアニオン交換性イオン液体の合成に時間を要した為、「(3)やや遅れている。」と評価した。しかしながら、イオン液体の合成と同時進行で、有機系アミンによる予備実験を行い、さらに、現在合成したCO2応答性イオン液体による抽出およびCO2応答性実験を開始したため、今後は研究の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
様々な金属イオンを用い、合成したアミン修飾イオン液体によるCO2のバブリング前後における、抽出挙動の変化について検討する。まず、金属カチオン種と金属アニオン種の混合溶液を用い、理論通り金属アニオン種のみが抽出されるかどうかを確認する。次に、抽出分離が困難とされている金属アニオン種の相互分離を検討する。検討するパラメータは、水相中の夾雑イオン、pH、温度などである。最終的には、特定のアニオン種のみを抽出したイオン液体からのN2バブリングによる逆抽出を行う。
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