研究課題/領域番号 |
17H07354
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
樽田 泰宜 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 原子炉廃止措置研究開発センター, 博士研究員 (20806624)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 廃止措置 / 原子力知識マネジメント / 知識マネジメント / 顕在化 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
廃止措置に対する知識の顕在化の実現に向け、既存研究の省察に注力すると共に、研究対象(ふげん)が有する知識・情報を明らかにすることを目指し,原子炉施設の概念化と「知識」などに関する理論的研究を実施した. 顕在化に関しては,既存の情報を整理,体系化するためにオントロジー(Ontology)という人工知能研究分野の知見を活用した.オントロジーを簡単に述べると,人とコンピューターにとって意味や意図が分かるようにした分類や体系化の手法である.廃止措置に関する知見は蓄積されつつあるが完了事例も少なくプロジェクトを効果的に推進するための方策が望まれている.そのため,単純なデータベースではなく,情報の繋がりや意味・意図が分かる形で表現することが必要であると考え,オントロジーのプロトタイプの構築を試みた.結果として原子力の部分的な側面である廃止措置だけでなく原子力発電という広い領域でのオントロジーやそれに必要な基本的な定義,各機器の繋がりや表現方法に課題があることを明らかにした. 一方,先行研究等では,知識マネジメントが原子力分野は廃止措置には有効であるものの具体的な方法論までは踏み込まれていないことが分かった.途中経過であるが,廃止措置の知識には機器情報やマニュアルといった目に見える形の情報も重要であるが,人の記憶など言葉にされていなかったり,さらには言葉にすることができなかったりする非明示的な知識も重要である点を指摘した.そして,この課題をクリアにする具体的な方策はほとんど言及されていないことも明らかにした.そこで,知識の顕在化のためにもどういった知識が対象であり,それらをどのように表現または捉えるのかが重要であると考えて,形式知や暗黙知といった表現について研究を実施した.結果として,知識の表現に関する概念のコンセプトモデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プレ調査では,廃止措置プロジェクトに対してメタ的な認識として,自身の業務や廃止措置自体を俯瞰視することに関して調査対象者は得意としていないということが分かってきた.そこで,対象者にフィットした方法や個別対応が可能な方法を開発する必要が明らかになり,そのための調査設計がやや遅れている. 一方,事例や既存研究では,廃止措置という長期プロジェクトに対して退職者による技術や知識の喪失が懸念されるという指摘があり,プロジェクトの推進の課題とされていた.本申請研究では具体的な課題の解決に必要な基礎研究に注目をしており,そのための理論的背景として,汎化されたコンセプトモデルを最終年度に先駆けて研究した.この知見は調査に活用可能である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,初年度に明らかになった点を踏まえて進める.調査に関しては初年度に実施したプレ調査の結果に基づき調査方法を再度検討し,半構造化インタビューでもとくに対話を重視した方法を検討する.このとき,初年度に検討したコンセプトモデルを活用し,より効果的な情報蒐集が可能となる調査を設計する.このコンセプトモデルは蒐集したい情報や知識を明示化するものであり調査設計の重要な指針となる. 廃止措置に対する体系化には,オントロジー工学を応用した表現を検討するがその際には,各接続に関して先行研究にある身体構造のオントロジーに関する知見を活用し接続箇所の具体性よりも階層的な構造に着目して構築を進める.つまり,知識を顕在化するために原子炉施設を詳細に記述することは重要な点であるが,本研究の目的は大規模プラントシステムというドメインを正確に記述することではない.そこで,重要な要素や構成機器を明示化することで,それに関連する情報や知識体系に着目することが可能となる要素モデルを検討することを推し進める. 知識の顕在化に関するモデルの発展や研究の汎化性に関する議論では,長期的なプロジェクトである廃止措置プロジェクトにフォーカスしつつ,そこで課題となる適切な知識や情報の伝達のあり方を考慮した理論的側面に関して先行研究や理論を踏まえながら研究を進めて結果を取りまとめる.
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