研究実績の概要 |
イネは、わずか30分の日長の違いを認識できるほど正確で、ON/OFFが明確な、花芽形成ホルモン(フロリゲン)Hd3a/RFT1 遺伝子の転写制御をおこなう。これまでに、この正確な計時機構の遺伝子ネットワークが解析され、Grain number, plant height, and heading date 7 (Ghd7) →Ehd1→Hd3a/RFT1というイネ特異的なカスケードとHd1の相互作用が重要であることがわかってきた。このカスケードの上流に位置するGhd7の転写制御には、フィトクロムによる光信号伝達系と概日時計との相互作用が大きく貢献していると考えられている。またGhd7は開花期だけではなく、穂の形態形成、草丈、環境応答制御にも関わっていることが報告されており、その多面的な機能は収量などの重要農業形質に大きな影響を及ぼすと考えられる。本研究ではGhd7発現制御の解析を通して、イネの光と概日時計シグナルの統合機構と、開花期制御因子の多面的な機能について解析を行う。 H29年度は、Ghd7の発現制御解析に関する形質転換体を多数作製し、一部のラインについて解析を行った。高効率イネ形質転換法を用いて、Ghd7のC末端にレポーターが融合した形質転換イネを作製した。フィトクロムによるChIP解析を行うため、フィトクロム-GFPタンパク質が高発現する形質転換イネをスクリーニングし、一部のラインについて十分と思われるタンパク質の蓄積が確認された。ある程度成長したイネでChIP解析を行う必要があるため、播種後8から12週のイネについて、固定条件およびクロマチン断片化条件を検討した。
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