研究実績の概要 |
近年の不安定核生成技術の進歩によって、陽子と中性子がアンバランスな原子核の生成が可能になってきた。その中でも原子核が安定となる二重魔法数(陽子数28,中性子数50)を持つ78Niは不安定核領域に存在する原子核であり、安定核でよく成立してきた原子核模型が不安定核でも成立するのか、あるいは異なった秩序が現れるのかを明らかにする上で象徴的な原子核である。その核構造はベータ崩壊強度分布とも密接に関係するため、重元素合成過程の理解を進展させる上でも重要な役割を果たす。本研究は中性子過剰な不安定領域にある78Niを対象にベータ崩壊に伴う遅発中性子飛行時間測定を行い、78Niに期待される二重魔法性を明らかにすることを目的とした。本目的を達成するため、2018年度前半に実験装置の支持架台を作成し、データ取得システムの構築を行った。テネシー大学との共同研究においてインプランテーション検出器を新たに開発した。2019年前半に中性子飛行時間測定用検出器アレイ、および78Niを停止させるインプランテーション検出器を理化学研究所RIビームファクトリーに搬入し、年度後半に78Niのベータ線核分光測定および遅発中性子飛行時間測定を行った。実験を行うため検出器のビームラインのセットアップ、FlashADCを用いたデータ取得系のセットアップ、オンライン解析のためのソフトウェアの開発を行った。取得したデータから中性子分離エネルギーより高いエネルギーへのベータ線遷移強度分布を導出することが可能である。得られた実験結果と殻模型計算との結果を比較し、国際論文誌に公表予定である。
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