研究実績の概要 |
本研究では、異種有機半導体からなるヘテロ構造の構築およびその界面の自在設計を目的として、スメクチック液晶相形成に基づく新しい自己集積型有機半導体材料の開発に取り組んでいる。本研究の分子設計において、まず溶液プロセスおよび半導体の分離積層構造の形成を可能にする側鎖の選択が重要となる。昨年度、前述の可溶性置換基として、オリゴエーテル鎖が縮環型の剛直な半導体骨格に対しても、有機溶媒への高い溶解性を付与させる良好な置換基であることを確認している。一方で、オリゴエーテル鎖を多段階合成の初期に導入した場合、その後の反応の選択性および収率の低下、精製の困難等の問題があったため、これらの置換基を多段階合成の終盤に導入するルートを検討した。その結果、有機半導体骨格分子の臭素化物とオリゴエーテル鎖を有するアルキルGrignard試薬とのクロスカップリング反応によって、パイ拡張された剛直な半導体分子骨格(例えば、[1]Benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene, [1]benzothieno[3,2-b]naphtho[2,3-b]thiophene)であっても、容易にオリゴエーテル鎖を導入することが可能であった。本ルートは、共通の合成中間体に対して、合成終盤で側鎖を導入できることから、構造物性相関を調べるための分子ライブラリーを効率的に作製するうえで重要となる。今後はまず、これらを両末端または片末端に有する分子について、合成および相転移挙動や構造のキャラクタリゼーションを行い、高次スメクチック相の発現させる分子設計指針の探索を行う。
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