ミトコンドリアは真核細胞において大半のエネルギーを産生する細胞小器官であり、その機能を良好に保つことが正常な生命活動に必要となる。ミトコンドリアが機能するために必須である呼吸鎖複合体を構成するサブユニットの多くはミトコンドリアゲノムmtDNA上に存在する。ミトコンドリア毎に含有するmtDNAの数は異なるため発現する呼吸鎖複合体の量も一定ではないはずだが、mtDNAの動態とミトコンドリアの機能との関係については未だ未知な点が多い。本研究では、ゲノム可視化プローブをミトコンドリアに局在させた上で、所属研究室で開発されたATPバイオセンサーを使用し、生細胞中のミトコンドリアにおけるmtDNAの局在と機能のダイレクトな因果関係を調べることで、複雑な動態をもつミトコンドリアがどのようにして機能を維持しているか解明することを目的とする。 mtDNAの染色にはTALEを用いる予定であったが、難航したため近年核ゲノムを染色するのに頻用されているCas9/CRISPRシステムを使用してテロメア配列を染色したところ、一定の精度で染色できることがわかった。比較検討した結果、Cas9-GFPを用いて染色した場合よりも、MCP-GFPと結合するMS2配列を繰り返し付与したsgRNAを用いた方がよりS/N比の高い染色画像が得られた。過去の報告から、sgRNAのゲノム認識配列以降に変異を加えることでCas9とsgRNAの結合率が高くなることが知られていたため、これを試した所より多くのテロメア領域を可視化することができた。
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