研究課題/領域番号 |
17H07371
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研究機関 | 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
宮部 泉 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 腫瘍診断・予防科, 研究員 (20800155)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 / リンチ症候群 / マイクロサテライト不安定性 |
研究実績の概要 |
ミスマッチ修復(MMR: Mismatch Repair)はDNA複製によって生じるミスマッチを特異的に認識し、修復する複製後修復機構の一つである。それに加えて、MMRは相同組換えの際に生じるミスマッチも認識し、不完全な相同配列間での組換えを抑制していると考えられている。本研究の目的はMMRががん細胞における染色体再編成にどのように関与するかを知ることである。 我々はまずMMR欠損のがん細胞をマイクロサテライト不安定性を指標として単離し、1)トランスクリプトーム解析による融合遺伝子の検出、2)アレイCGH法によるコピー数変化の検出、によって同定することを試みた。本年度は条件検討として約10のMMR欠損の大腸がんを単離し、染色体再編成の単離、同定を行なった。また、コントロールとしてマイクロサテライト安定(MMRに関して正常)のがん細胞も同時に単離し、その比較を行った。 1)においてはMMR欠損のがん細胞から複数の既知融合遺伝子が検出された。また、MMR欠損のがん細胞における融合遺伝子の形成がMMRに関して正常のがん細胞のそれと比較して高頻度で起こっていることが明らかになった。2)においては、MMR欠損のがん細胞では大規模な染色体の欠失や重複などは検出されなかったが、局所的なコピー数変化が高頻度で検出された。 以上の結果からこれまで染色体安定とされていたMMR欠損のがん細胞においても特定の染色体異常が高頻度で起きていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では本年度にMMRに関して正常と欠損のがんをそれぞれ50程度解析することを設定していたが、現在のところ約10のMMR欠損のがんの解析にとどまっている。第2回の申請であったために研究の開始時期が遅れたことが理由の一つとなっている。また、技術的な問題から一分子シーケンサーの導入が遅れていること、トランスクリプトーム解析による融合遺伝子の検出法の樹立がやや遅れているも理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りMMRに関して正常と欠損のがんから染色体再編成を単離し、その構造の解析を行う。当初の計画では培養細胞を用いた染色体再編成の再現を行う予定であったが、進捗状況に遅れが出ているため、本年度の研究はデータの蓄積とその統計解析に専念する。
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