研究課題/領域番号 |
17H07372
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
灰谷 知純 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (90804500)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 吃音 / 認知行動療法 / 社交不安 / 日常生活 |
研究実績の概要 |
本研究は、吃音のある成人の問題維持を認知行動療法的観点から明らかにすることを第一の目的とし、アウトカムとして自覚的吃音症状とコミュニケーションの満足度を設定した。また、吃音症状には変動性があることが知られており、日常生活における問題の維持をより生態学的妥当性の高い形で捉えるために、Ecological Momentary Assessment(EMA)と呼ばれる即時的回答法を用いた。 平成29年度は第一に、日常生活での発話を伴う社交場面におけるEMAを用いた予備的な測定を8名の吃音のある成人に対して実施し、測定が確実に行われることを確認し、測定項目を確定させた。そのうえで、19名に対する測定を実施した。 全体として、自覚的吃音症状とコミュニケーションの満足度は強く負に関連しており、自覚的吃音症状には吃音に注意が奪われる注意バイアスが、コミュニケーションの満足度にはコミュニケーションに対する集中が強く関連することが明らかとなった。また、注意バイアスとコミュニケーションへの集中は、互いに弱い関連しか示さなかった。このことは、両者は独立した問題の維持要因であり、それぞれに対する治療的介入が必要であることを示唆している。また、特性的な社交不安は注意バイアスと正に関連し、特性不安はコミュニケーションに対する集中と負に関連することが示され、心理特性に応じて問題となる要因が異なることが示唆された。 さらに、当初の計画に加えて、吃音のある成人の社交不安の特徴を明らかにするための調査を行った。吃音のある成人の社交不安を、先行研究で報告されている不安症のある人と比べた結果、主に発話を伴わない場面では低く、電話場面で高いことがわかった。このことは、吃音のある成人は、発話が関連する社交場面で特に困難を感じることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
吃音のある成人を、自助団体・研究所HP等を介して募集したが、十分に参加者が集まらなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
当初目標の30名に到達するよう、追加で参加者の募集を行う。
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