1.光バイオモジュレーションによる三次元培養皮膚の高品質化 三次元皮膚の培養では、培地成分や酸素等の供給不足により、組織のバイアビリティが低下する問題がある。その防止策として、光による生体活性化作用(光バイオモジュレーション)の応用を検討した。培養開始5日後に中心波長660 nmまたは830 nmのLED光(15 mW/cm2)を50秒、150秒または600秒間照射し、2日後にWST法により組織のバイアビリティを評価した。その結果、830 nmの光を50秒間照射した群で、非光照射群との間に有意差が認められた。また、培養皮膚中の生細胞と死細胞をそれぞれ染色し、その分布を顕微鏡で観察した結果、光照射により真皮層の死細胞の密度が有意に減少していた。さらに、光照射群ではバリア機能の指標となる電気抵抗値や角質層の厚みも向上する傾向があり、皮膚としての品質の向上が確認された。この方法は、培養組織に弱い光を照射するのみで効果が得られることから、高い実用性が期待できる。 2.光音響法による三次元培養皮膚中の血管構築の評価 培養皮膚中の血管には選択的に励起可能な光吸収体が存在しないため、光音響法による評価のためには吸収標識が必要である。そこで、CD31抗体(一次抗体)と吸収標識抗体(二次抗体)を用いて、培養皮膚中の血管をin situで標識することにした。複数種類の吸収標識抗体の光音響波発生効率を比較し、AlexaFluor555標識抗体を採用した。培養開始1日、5日、9日後に上記標識を行い、標識の吸収波長(553 nm)のパルス光を用いて光音響信号を取得した。計測後、同培養皮膚の血管を病理組織学的に観察した結果、培養開始5日後と9日後において、標本で確認された血管に対応する深さで光音響信号が確認された。以上より、光音響法により三次元培養皮膚中に構築される血管の検出が可能であることが示された。
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