Geant4を用いた光学シミュレーションを用いて、光ファイバの長さに依存するパルス波形弁別精度の低下とその原因を調べた。その結果、シンチレーション光が光ファイバを通過する際の光路長のばらつきが精度低下の大きな要因となっていることを示した。したがって、ファイバ検出器にパルス波形弁別を実装する場合、光路長のばらつきが小さいグレーデッドインデックス型の光ファイバが適切であることを示唆した。 研究代表者は先行研究にてPeak-to-charge discrimination(PQD)法と呼ばれるパルス波形弁別を開発した。PQD法は信号波形のピーク電圧と積分電荷の比を用いてパルス波形弁別を行う方法であり、簡便かつ高い精度でシンチレータにおける信号弁別が可能である。本研究では、既存のパルス波形弁別法である“部分積分電荷比較法“とPQD法のどちらが高い精度を得られるか評価した。その結果、今回の条件ではPQD法の方が約1.7倍高い精度が得られた。 前年度の研究成果として、放射線医学総合研究所の中性子照射施設(NASBEE施設)において、検出器開発に適した中性子場照射場を作成し、またリファレンスデータとして熱中性子束、速中性子線量、ガンマ線線量を独立に評価した。本年度は開発した検出器をNASBEE中性子場で照射した場合のシミュレーションを行うため、照射室のジオメトリを再現したシミュレーションコードを作成した。シミュレーションコードの妥当性を評価するため、実測した熱中性子束との比較を行った。その結果、シミュレーションは実験値を高い精度で再現し、NASBEE施設における中性子照射のシミュレーションが可能となった。NASBEEの様な一般に公開された共用施設において、評価済みの実験用中性子場が確立されたことや、シミュレーションコードが確立されたことは今後様々な研究開発に有用であると考えられる。
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