研究実績の概要 |
神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor; NET)は神経内分泌細胞に由来する腫瘍である。神経内分泌細胞は全身の所臓器に分布することがわかっているが、各臓器に発症するNETは希少がんであり、その解析や治療方法の確立が遅れている。本研究の目的は、ヒトNETの症例解析とモデルマウスの作製・解析を通じてNETの本態を解明することである。 本研究室ではこれまでに代表的ながん抑制因子p53の標的遺伝子としてPHLDA3を同定し、がん抑制的な働きをしていることを明らかにしてきた(Cell, 2009)。同時に、膵臓と肺のNETにおいてPHLDA3遺伝子部位での高頻度なヘテロ接合性の喪失(LOH)が観測されることを報告してきた(Cell 2009, PNAS 2014)。膵臓と肺のNETに共通してPHLDA3遺伝子に異常が頻発していたことから、全身で発症するNETにも共通してPHLDA3の遺伝子異常が観察できると予想し、様々な臓器で発症したヒトNET検体を収集・解析することを計画した。さらに、PHLDA3遺伝子ノックアウトマウスを元に作製したNETモデルマウスを解析することで組織を超えたNET共通のがん抑制メカニズムを明らかにする。本研究によってPHLDA3遺伝子の異常がNET発症と関連付けられることが明らかになれば、希少がんであるNETの発症メカニズムの解明と、その治療・診断方法の開発に繋がることが期待できる。
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