研究課題/領域番号 |
17H07386
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
芳賀 拓真 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (30728233)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 貝化石 / 種多様性 / 分類 / フィリピン / 新生代 |
研究実績の概要 |
本研究は,化石として保存性が高い貝類を用いて,現世での多様性が特に高いフィリピン諸島を対象に,更新世の化石種を徹底的に記載分類してカタログ化し,その多様性の全容を明らかにすることが目的である。本年度は以下の成果が得られた: 1) 高精度実体顕微鏡の導入など,研究遂行に必要な環境整備をほぼ完了した。また,フィリピン国立博物館地質古生物部門と研究協力に関する契約を取り交わし,今後5年間の協力体制を構築した。 2) データ不足であるルソン島を補完するため,国立科学博物館ならびにフィリピン国立博の収蔵標本を検討した。国立科博の標本については更新世後期と考えられるQuezon州の1産地から26種を鑑定するに留まったものの,現生種に比較されるヒルギシジミ類Geloinaを見出し,またフィリピン国立博では絶滅種と考えられるGeloinaを見出した。フィリピン諸島ではTerebrariaやTelescopiumなどマングローブ群集を特徴付ける巻貝が中新統まで遡って発見されるが,これらの発見はGeloinaが第四紀以降に出現したことを示しており,マングローブ性貝類の成立史を復元するうえで注目に値する。 3) ミンダナオ島の19産地ならびにレイテ島の4産地について,多様性解析に用いるデータセット構築を進めた。先行研究で指標として用いられているタカラガイ科は,これら2島で従来より多い3種が記録され,化石種数が過小評価されている可能性が高まった。また,ミンダナオ島北東部のAgusan del Sur州Prosperidadに分布する4産地について,288種2845個体に基づき予察的なrarefaction curveを算出したところ,種多様性は最大1,077種と見積もられた。断片的な結果であるものの,フィリピン諸島の更新統の種多様性は想定よりも高い可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査は年次計画通りに進めることができたいっぽう,標本のカタログ化に必要不可欠な機材調達の遅れが全体の進捗に影響し,計画に遅れが生じている。機材が1月末の納品であり,また3月は現地調査を行ったことから作業可能期間が実質1ヶ月となり,当初予定していた目標数までのカタログ化が進まず,ルソン島についての解析用データセットの構築ができなかった。次年度の上半期に速やかに実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の当初計画ではルソン島の15産地について鑑定を進めてデータを集積する予定であったが,完遂できたのはケソン州Catanauanの1産地に留まった。初年度の遅れを取り戻すため,ルソン島の産地のものについて中心的に鑑定を進めるとともに,レイテ島の産地における解析用データセットの構築も進める。これらを上半期までに実施する。そのほかは概ね当初の研究計画通りに進めるが,次年度予定しているルソン島ならびにパナイ島における現地調査は期間を短縮し,室内作業に時間を配分する予定である。
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