本研究で得られた成果は現時点では予察的なものであるが,更新世はコーラル・トライアングルの多様性が低かったとする断片的な化石記録に基づく説や,おそらく今と同様に高かっただろうとする仮定に対して,積極的な検証結果を与えるものである。また,本研究が完遂された際には,フィリピン諸島はもとより,黒潮下流域にあたる日本の生物相の起源と変遷を議論する上で不可欠なデータを提供するものとなるから,多様性保全などにおいても重要な参考材料として寄与する。さらに,本研究ではその種類もしくはグループの化石としての初出記録を多数見出していることから,生物地理的研究においても価値あるものである。
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