研究課題/領域番号 |
17H07387
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
井手 竜也 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (80724038)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | タマバチ / 周期的単為生殖 / ゴール形成昆虫 |
研究実績の概要 |
本研究は、ハチ目に属する昆虫であるタマバチ科を材料に、生物の繁殖戦略の1つである「周期的単為生殖(雌雄が出現する両性世代と雌のみが出現する単性世代が周期的に入れ替わる現象)」に関して、その進化と適応的意義についての解明に取り組んでいる。 タマバチ科は、周期的単為生殖をおこなう代表的な昆虫であると同時に、植物に寄生し、ゴールと呼ばれる特殊構造を形成する「ゴール形成昆虫」としても知られている。このため、タマバチ科はゴール形成性や寄主植物との関係性など、幅広い視点から周期的単為生殖の進化と適応的意義を考察できる、優れた研究材料と考えられる。 本研究では特に、分類体系が未確立で、生態情報もほとんど知られていないアジア固有の種について、基礎的な分類体系の確立を図りながら、周期的単為生殖をはじめとした繁殖にかかわる多様な生態、および系統関係を明らかにすることによって、周期的単為生殖の進化と適応的意義を解明することを目的とする。 本年度は秋季から早春にかけて出現する単性世代のゴールおよび成虫を中心に日本各地で採集し、生態情報の収集をおこなった。また、DNAサンプルを収集し、一部の種についてCOI領域の部分塩基配列の決定をおこなった。成果の一部については、日本昆虫学会第77回大会、日本生態学会第65回大会、第62回日本応用動物昆虫学会大会において発表した。また、これらの一部については論文原稿を作成し、学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内種については、予定したタマバチのゴールの採集および生態情報の収集をおおむね取りおこなうことができた。交付決定が採集に適した時期よりも遅くなったため、旅費の支出は別予算をあてて対応できたため、おおむね問題なかった。また、当初予定していた海外での現地調査は見合わせることになったが、現地協力者からの情報提供によって、当初予定したものと同様の水準の情報が得られたことから問題なく進展した。系統解析についても、着々とDNAの抽出や解析を進めている。成果の一部は学会発表でも公表済みであり、学術雑誌への投稿もおこなっていることから、上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は日本に分布するタマバチ種のうち、11属30種を目標に野外よりゴールまたは成虫を採集し、系統解析等の研究材料とすることを計画している。本年度はまず、昨年度採集できなかったサンプルを収集し、この目標数に近づけることに取り組む。得られた生態情報について、その関係を回帰分析等の手法にとって明らかにし、比較する。また、生態情報を系統樹上に反映し、際節約法による祖先形質の復元を試みる。これらの結果をほかの周期的単為生殖をおこなう動物群と比較し、考察する。
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