研究課題/領域番号 |
17H07389
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
叶賀 卓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (40803903)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 脳波 / アーチファクト除去 / 単極信号 |
研究実績の概要 |
本研究では,実環境で生じる様々なアーチファクト,特に眼球由来の眼電アーチファクトが混入した場合に着目し,その混合信号から脳波成分を抽出することを目的としている.さらに,抽出した脳波成分の識別能力を明らかにし,オンラインシステムとしての処理許容時間内で識別結果の出力までを行なえる信号分離アルゴリズムの提案および実装を目的としている. 本年度では,アーチファクト除去手法の基本的な処理フローを決定した.眼電アーチファクトは基本的に波形が似ていても,そのときの眼球の動き方,瞼の閉じ具合によって波形が微妙に異なる.眼電アーチファクトの基本的な波形を表現しつつ,様々なスケールに対応させるために,辞書学習ベースのフレームにマルチスケールの概念を導入した.これにより,従来の手法よりも高精度な分離精度を提示した手法を提案することができた.この内容はNeurocomputingに投稿する予定である. また,この分離手法の評価を行なう際に運動想起時の脳波データを対象としていた.その過程で,そもそもアーチファクト除去をしない場合の単極による識別精度が不明であったため,派生物として単極の脳波信号のみを用いた識別処理のフローを提案した.この内容はIEEEの国際会議に投稿済みである. さらに,分離手法の精度を検証するうえでは,SSVEP特徴量のほうが適していることが年度の途中で判明したため,このデータを扱うことになった.この刺激の場合,筋電アーチファクトのほうが問題となるため,対象を筋電アーチファクトに変更し,かつ電極数がいくつかある状態で分離手法がどのように影響を与えるのかを検証した.この内容はIEEE国際会議に採択済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
評価するデータが運動想起時のデータから視覚刺激提示時のデータに変更とはなったが,分離手法の大枠は完成しており,残りは実際にその手法を組み込んだフレームワークの構築とデータ計測,パラメータの初期値の最適化となっている. このため,次年度にフレームワーク全体をリアルタイムで実行できるようにシステムを調整し,単極脳波信号によるシステムの操作性脳,使い勝手と単極脳波信号に対するアーチファクト除去手法の重要性,有用性を明らかにすることができれば本課題である,実環境下での単極脳波信号を入力としたアーチファクトフリーシステムの実現は達成できると考えられるため.
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今後の研究の推進方策 |
SSVEP特徴量を誘発する実験デザインを構築し,その刺激提示時に頭を動かし,意図的に脳波信号に筋電アーチファクトを混入させる.また,アーチファクトを混入させない場合と,刺激を出さずに頭を動かしたときのみのデータも計測する.これにより,正解となる脳波と筋電アーチファクトがそれぞれ既知の状態で検証を行なうことができる.これにより,前年度に提案した辞書学習ベースの手法を筋電アーチファクトにも対応できるように拡張させる. また,SSVEPベースのBCIフレームワークを構築し,このシステムにアーチファクト除去手法を組み込む.その際のリアルタイム性を検証し,アルゴリズムの見直しをしつつ,データ数を増加させ,インタフェースの有用性を向上させる.さらに分離手法のパラメータの初期値およびその値の範囲に制約を与え,分離精度の安定化を狙う. これらの計測・検証後にフレームワーク全体をリアルタイムで実行できるようにシステムを調整し,SSVEP特徴量を含む単極脳波信号を入力とした筋電アーチファクトフリーシステムを実現する.
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