本研究では、実環境で生じる様々なアーチファクト、特に眼球由来の眼電アーチファクトが混入した場合に着目し、その混合信号から脳波成分を抽出することを目的としている。この時、対象の信号は単極のみであり、リファレンス信号など追加の電極は使用しない。さらに、抽出した脳波成分の識別能力を明らかとし、オンラインシステムとしての処理許容時間内で識別結果の出力まで行える信号分離アルゴリズムの提案および実装を目的としている。 2019年度では、2018年度に提案したアーチファクト除去手法の基本的な処理フローによる成果をまとめ、Neurocomputingに投稿、採択された。この手法をGithubにまとめ、提案手法をオープンソースデータとして公開した(https://github.com/Suguru55/MSDL_based_artifact_rejection)。これにより、研究目的の半分である、「単極の情報のみを用いて混合信号から脳波成分を抽出する」ことは達成した。 ただし、この手法はオフラインでの処理が対象となっている。これは辞書学習ベースの行列分解手法の計算コストが高いため、オンラインシステムに求められる処理許容時間内での出力が難しいためである。2018年度は運動想起、2019年度はSSVEPを対象とした計測プロトコルを実施し、オンラインでの精度を検証することを試みたが、SSVEPの提示周波数の厳密さを実現するまでに時間がかかり、データ計測が終了したのが、2019年2月であったため、研究目的のもう半分である「システムの提示許容時間内で識別結果の出力までを行える信号分離アルゴリズムの提案及び実装」は現在進行中である。
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