研究課題/領域番号 |
17H07396
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
多田 幸平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (70805621)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | スピン混入誤差 / 第一原理計算 / 表面・界面 / 不均一系触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、今まで算出スキームの無かった表面の第一原理計算法におけるスピン混入誤差の算出スキーム確立と、そのスキームを用いて不均一系触媒に関する表面化学現象を中心にその影響を解明していくものである。 平成29年度では、スピン混入誤差の補正法の一つであるスピン近似射影法が、一般的な表面の第一原理計算法であるDFT/plane-wave法(density functional theory with plane wave basis)に適用可能であることを、気相における二量体開裂の計算から担保した。そして、そのスキームを用いて、不均一系触媒の一つであるAu/MgO, Au/TiO2系における金クラスター吸着の第一原理計算に生じている誤差を算出することに成功した。また、不均一系触媒反応にも本スキームを適用し、スピン混入誤差が活性化障壁に与える影響も検討した。これらの検討の結果、表面化学現象におけるスピン混入誤差に関して次のことが分かった。(1)その誤差の値は比較的小さく、吸着エネルギーの検討において問題になることはまずない。しかし、(2)金属-金属間相互作用や活性化障壁などの検討においては誤差の割合が50%前後になることもあり補正を加えた方が望ましいといえる。とくに、(3)活性化障壁においては誤差の補正の有無で律速段階が変わるときもあった。(4)共有結合の開裂や生成で生じるスピン混入誤差は表面との相互作用で小さくなる傾向がある。だが、(5)共有結合性が表面との相互作用で弱まるため、気相では誤差が生じない(結合が生成している)原子間距離であっても表面系では誤差が生じることがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、一年目でスキームの確立と安定構造(金属クラスターの解離吸着状態など)における誤差の影響を検討し、2年目で遷移状態や反応座標における誤差を検討する予定であった。しかし、活性化障壁における影響を含め、不均一系触媒の第一原理計算における誤差の影響を1年目の段階で検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定にあった、二量体の解離の反応座標におけるスピン混入誤差の影響を検討する。 また当初の計画以上に進展しているため、(1)実験との比較検討や、(2)他の誤差(電子の交換反発の過小評価など)に関する補正法との連携や、(3)表面の第一原理計算法の高精度化といったテーマにも着手していく。
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