本研究課題は膵島細胞の分泌するホルモンなどの血糖値制御因子を、細胞が生きたまま単一細胞レベルで、かつ同時にリアルタイムモニタリングを実現する、単一細胞分泌評価システムを開発することを目的としている。これを実現するためにインスリン、グルカゴン等を標的モデルとした独自のタンパク質プローブを作製し、それらを発現する各種センサー細胞を開発する。 平成29年度はグルカゴンを標的とし、グルカゴン受容体の立体構造、標的認識メカニズムを考慮し、タンパク質プローブに使用する部位を選定した。続いて細胞から受容体の構造遺伝子を抽出し、グルカゴン認識に関わると考えられる部位のクローニング並びに遺伝子合成を行った。最後に取得したグルカゴン認識部位とシグナル産生部位である発光タンパク質、蛍光タンパク質を遺伝子工学的に融合し、タンパク質プローブである新規の融合タンパク質を作製した。作製した融合タンパク質のプローブとしての機能を検討するため、標的への結合能の解析を行った。 作製した複数の融合タンパク質のグルカゴンに対する結合能を解析したところ、受容体の特定の配列のペアを用いることでBRETシグナルがわずかに上昇することが明らかとなった。このことは、融合タンパク質がグルカゴンと結合し、その結果発光タンパク質と蛍光タンパク質が近接したことに起因するBRETが発生している可能性が高いと考えられる。しかしそのBRET効率はわずかであったことから、今後BRET効率の上昇、検出感度の向上を目指してさらなる改良を行っていく計画である。さらに開発したタンパク質プローブを発現するセンサー細胞の開発と細胞チップの開発を行い、単一細胞分泌評価システムの構築を進める。
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