インドネシアをはじめとする東南アジア諸国では、近年の急速な経済発展の一方で、パーム油の生産時に発生するEmpty Fruit Bunches(以下、EFB)や火力発電所で発生する石炭燃焼灰(Coal Ash(以下、CA))等の産業廃棄物の増加が問題視されている。また、インドネシアでは、主要なエネルギー資源の一つである石炭の開発に伴い発生する酸性鉱山廃水(Acid Mine Drainage(以下、AMD))が問題視されている。多くの場合、遮水シートによる対策や発生したAMDの中和処理が実施されているが、処理に要する労力やコストは多大なものとなる。この場合、地域の発展に伴い発生するEFBやCAを有効利用することにより、AMDの発生を抑制することができれば、産業廃棄物の有効利用と石炭開発におけるAMDの抑制を同時に達成することが可能となる。そこで本研究では、インドネシアにおいてEFBやCAを覆土工法と呼ばれるAMDの発生源対策に適用することで、AMD問題を抑制する新たな対策法を検討した。 本年度では、CAやEFBの覆土工法への適用時に懸念されるAMD以外の問題に関して、現場調査および室内実験を実施した。その結果、CAから溶出する重金属による鉱山廃水の汚染やCAの土性の影響により覆土部分が土壌侵食とともに崩壊する可能性が示唆された。また、CAより溶出するアルミニウムイオンや高アルカリ性を示す浸出水が緑化過程における植物の生育に与える影響についても考慮すべきであると示された。これまでの結果より、CAおよびEFBを覆土工法に併用することで、CAの中和作用とEFBの酸素消費により、効果的なAMD対策が可能であると示されたが、上述したAMD以外の問題1. 重金属溶出による水質汚染、2. 覆土層の土壌侵食、3. 緑化過程における植物生育への影響を考慮すべきであるといえる。
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