加齢に伴う筋力低下・筋萎縮(サルコペニア)は認知症と並び要介護の主要因となることから、その発症機序と早期予防・治療法の研究が求められている。骨格筋は代謝特性の異なる速筋及び遅筋線維から構成されるが、サルコペニアに至る過程で、一方向性の骨格筋線維タイプ変化(速筋→遅筋)がおきる。各筋線維タイプは固有の代謝特性を有する。つまり、量的減少(筋力・筋量)だけでなく質的変化として筋線維タイプ変化能(代謝変換)の喪失を伴い、サルコペニアの病態解明の重要な手がかりとなる。本課題では加齢に伴う栄養状態の変動(アミノ酸変化など)と筋線維タイプ変換の分子機構を解明し、さらに栄養状態で制御されるオートファジーとの相互作用の機序を解明することを目的とした。老齢マウスの各筋線維タイプにおいて、オートファジーが変動することを見出している。そこで、申請者は本年度、筋線維におけるオートファジーの変動を、ハイスループットに解析する手技を確立した。さらに、この技術を用いて100 種類以上の市販の生体内因子・マイオカイン(購入済)を使い筋線維でオートファジーを誘導する因子およびオートファジーを阻害する因子の同定を試みた結果、筋線維でオートファジーを強く誘導する因子と抑制する因子を数種類ずつ見出した。さらに、マウス由来の温度感受性の不死化筋幹細胞を分化誘導後、骨格筋線維においても同様にオートファジーを亢進および抑制することを確かめた。
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