研究課題/領域番号 |
17H07410
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
武田 周一郎 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (10803273)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 岩橋章山 / 岩橋教章 / 内務省地理局 / 陸地測量部 / 台湾総督府 / 台湾日日新報社 / 歴史地理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、地図印刷技術者である岩橋章山の技術・動向・思想を分析し、日本と台湾における地図印刷技術の普及に果たした役割を明らかにすることを目的とする。岩橋章山は内務省地理局や陸地測量部、台湾総督府や台湾日日新報社で印刷事業に携わった人物であり、地図印刷技術の転換期にあたる19世紀末から20世紀初頭に日本と台湾、官民双方の間で技術交流の媒介となったと考えられるが、従来その活動は十分に注目されてこなかった。 研究期間内に明らかにする目標として、1)岩橋章山が作製した地図資料等を通じた印刷技術の理解、2)岩橋章山の台湾における動向に関する情報の収集、3)岩橋章山の思想と地図印刷技術の技術革新に及した影響の分析、の3点を設定し、2017年度は以下の課題に取り組んだ。 まず、所属機関が所蔵する岩橋章山関係資料等の精査を行った。橘忠助氏旧蔵美術資料群(神奈川県立歴史博物館所蔵)に含まれる資料のうち、岩橋章山と、その父である岩橋教章が作製に携わった地図資料等を撮影し、その細部を詳細に観察した。あわせて、個人所蔵資料や、古書店での購入資料を対象に加えて同様に分析した。さらに、国立公文書館及び防衛省防衛研究所所蔵資料のうち、岩橋教章と岩橋章山に関係するものを翻刻して両者の動向を把握した。 以上の調査に基づき、所属機関で実施した研究課題の報告書『岩橋教章・章山に関する総合的研究』(神奈川県立歴史博物館編・発行、研究代表:角田拓朗、2017年)に資料の翻刻と解題を掲載するとともに論考をまとめた。また、歴史地理学会例会で口頭発表を行った。これらの成果では、岩橋章山が19世紀末から20世紀初頭に日本と台湾、そして官民双方の機関で印刷事業に携わり、技術交流の結節点としての役割を担っていたことを予察的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画のうち、主に所属機関が所蔵する資料の分析を進めた結果、その成果を口頭発表や論文として公表できた。また、岩橋章山の思想を理解するために、岩橋自身が編纂した雑記録(神奈川県立歴史博物館所蔵)の分析に着手した。 一方で、他機関の所蔵資料を対象として岩橋章山が作製した地図資料の所在調査を行う予定であったが、上記の課題に注力したために十分に実施できなかった。しかし、台湾総督府在籍時に製図や彫刻を担った地図資料(国立公文書館所蔵)を確認するなど、今後、台湾における岩橋章山の動向を理解するにあたって一定の成果があり、当初の計画に影響を及ぼす状況ではない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき台湾での調査を行い、岩橋章山が作製した地図資料の所在調査を実施し、それらがどのような印刷技術によって作製されたのかを理解する。また、人名録や台湾総督府文書による情報収集に取り組み、岩橋章山の台湾における動向、特にどのような人脈のなかで活動し、各機関でどのような役割を果たしたのかについて検討する。 以上の調査を通じて、岩橋章山の技術・動向・思想について整理した上で、19世紀末から20世紀初頭の日本と台湾における地図印刷技術の普及に果たした役割を明らかにする。
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