研究課題/領域番号 |
17H07413
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
西嶋 翔太 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 任期付研究員 (50805116)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 状態空間モデル / 時系列解析 / CPUE標準化 / スパース推定 / コホート解析 / テイラーのべき乗則 / 最大持続可能漁獲量 / 資源評価モデル |
研究実績の概要 |
水産資源の加入量推定の予測精度を高めるためのモデル開発・解析に取り組んだ。まず、トロール調査のデータを使用し、マサバ太平洋系群の加入量指数の標準化を行った。その結果、卓越年級の発生時には、北緯160度付近の密度が増加することが明らかになった。一方、生物の分布と密度の関係を表すTaylorのべき乗測を計算したところ、係数の推定値は期間を通じて一定であった。 次に、スパース推定法を応用したコホート解析 (ridge virtual population analysis) を用いて、マサバ太平洋系群の資源評価を行った結果、加入量推定値と加入量指数の間に、hyperdepletionと呼ばれる関係が見られることが明らかになった。さらに、コホート解析を状態空間モデルに発展させたモデル (state-space assessment model) の解析を行った。このモデルは、1. 過程誤差と観察誤差を分離できる(特に年齢別漁獲尾数の誤差を考慮できる)、2. 再生産関係を推定できる、3. 選択率の変動を推定できるといった点が特徴である。このモデルをマサバ太平洋系群に適用した結果、再生産関係の残差に自己回帰モデルを当てはめることによって、加入の予測精度が向上することが示唆された。 また、加入量変動に大きく影響すると考えられるレジームシフトに関する解析も行った。スルメイカを対象に、単純に再生産関係を当てはめた場合と親魚量の推定誤差を考慮した場合(変数誤差モデル)で、レジームの有無・再生産関係を比較した。その結果、変数誤差モデルを適用すると、レジームシフトの可能性が減少し、親魚量と加入量の関係が明確になることが示された。さらに、数理モデルを用いて、1種ではなく複数種に注目することでレジームシフトの予測や管理が効果的に行えることを提案し、その成果を総説論文として国際科学誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物資源や生態系の変動要因のひとつであるレジームシフトについて、その予測と管理を効果的に行うための理論的枠組みを構築し、その成果を総説論文としてEcological Indicators誌に発表済みである。従来の資源評価モデルを拡張し、加入量及び資源量推定値の精度向上に取り組んだ成果については、すでに学会やシンポジウムで発表を行っており、現在論文を投稿中である。また、マサバ太平洋系群を対象に、加入量指標の標準化を行った研究と、コホート解析を用いて資源量評価を行った研究については、一部学会発表を行っており、現在論文を執筆中である。さらに、従来の資源評価モデルよりも推定精度の向上が期待できるモデル (state-space assessment model) の開発に着手し、すでに試算結果は得られている。また、スルメイカのレジームシフトと最大持続可能漁獲量に関する問題に取り組み、加入量の推定および予測精度を向上させる手法を開発した。この成果について、学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
状態空間資源評価モデルの開発を進め、加入量および資源量予測精度の向上に努める。具体的には、モデル選択の手法を開発し、加入量または再生産関係に環境影響や自己相関を考慮する。このモデルを、年齢別情報が利用可能な日本の複数資源に適用し、メタ解析を行う。
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