水産資源の加入量および資源量の推定精度を向上させるためのモデル開発・解析に取り組んだ。ゼロデータを含む2段階の解析手法であるdelta GLMと魚類の時空間分布の海区層化を自動的に行うGLM-treeを統合したモデル”delta-GLM-tree”を開発した。この手法を北太平洋の中層トロール調査のデータを使用し、マサバ太平洋系群の加入量指数の標準化を行った。その結果、2013年以降に卓越年級が発生し、その際には北緯160度付近の密度が増加することが明らかになった。また、時空間分布の解析に使用されることの多いGAMに比べて、delta-GLM-treeの方が加入個体の漁獲率の予測精度が向上することが示された。 次に、このdelta-GLM-treeで得られた資源量指数と、年齢別漁獲尾数を使用した2種類のコホート解析を行った。ひとつは、これまでの資源評価モデルであるridge VPA (virtual population analysis) で、もう一つのコホート解析は、状態空間資源評価モデル (state-space assessment model) である。これら2つを比較した結果、マサバ太平洋の資源量や加入量推定の不確実性が大きく減少することが明らかになった。 さらに、ランダム効果で時空間分布を推定するVAST (vector autoregressive spatio-temporal model) を使用し、マサバの産卵量データから産卵場の変遷について解析した。その結果、産卵期の延長が生じ、水温上昇の影響により、5~7月において産卵場が北上していることが明らかになった。これは、気候変動がマサバの加入量に影響する可能性を示している。
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