研究成果の概要 |
本研究室で開発されていた新規アルツハイマー病 (AD) マウスモデルは, 内耳有毛細胞でAD 発症の一因であるアミロイドβ(Aβ) を発現させることにより, 4ヶ月齢で高音刺激特異的な聴力低下を示す (Omata et al., Aging, 2016). 本研究課題において, 聴力低下の原因を解析した結果, 新規ADマウスモデルの内耳有毛細胞では, 細胞変性やシナプス数の減少が観察されないことから, 聴力低下は内耳有毛細胞におけるシナプス機能の低下に起因する可能性が示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
これまで, 多くの ADマウスモデルが開発され, 発症機序の解明から創薬研究まで広範にわたり用いられてきたが, 「疾患修飾薬」の開発には至っていない. 本研究課題を通して, 創薬研究から眺めた既存 ADマウスモデルの限界点を克服したこの新規モデルを用いた発症機序の解析からは, 前シナプスにおけるシナプス小胞リサイクリングの重要性を示唆する結果が得られた. 新規ADマウスモデルは, ADにおけるシナプス機能低下のメカニズムを分子レベルで解析するのに優れた系であることに留まらず, ADにおけるシナプス機能低下を聴力低下として定量化できることから薬剤開発に大いに貢献することも期待される.
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