研究課題
認知症は発症すると治療が困難であるため、認知症対策として認知機能低下予防が重要である。そのため、認知機能低下者の早期発見を日常業務として実施する認知機能スクリーニングシステムの構築は急務課題である。特に、市町村が日常業務で収集している保健医療・介護データを活用し、認知機能低下の高精度予測モデルを開発することが現実的かつ有効なスクリーニングシステムと考えられる。そこで本研究は、市町村が日常業務として収集・蓄積している情報を活用し、地域在住後期高齢者を対象とした認知機能低下の予測モデルを作成することを目的とする。宮崎県延岡市と共同研究契約を締結し、延岡市の地域在住後期高齢者を対象にコホートデザインにて疫学研究の開始をした。本研究の対象者は、延岡市が実施する後期高齢者健康診査に参加し本研究への参加同意した人である。この研究参加者を対象に、下記情報を電話調査にて収集開始した。認知機能検査と生活習慣調査を実施し、認知機能得点、運動習慣、喫煙習慣、飲酒習慣、うつ症状、家族構成、教育歴、既往歴、自立度(activities of daily living (ADL), instrumental ADL [IADL])等々の情報を収集開始した。なお、当データ収集は予測モデルを作成するための訓練データセットと、その予測モデルの精度評価をする検証データセットの両方のデータを収集している。また、認知機能検査得点のカットオフ値に基づき、対象者を認知機能障害群と正常群に群別し、これを結果変数とする予定である。生活習慣調査結果、健康診査結果、そして介護情報のデータを説明変数群とし、スパースモデリング等の機械学習手法を活用し、地域在住後期高齢者を対象とした認知機能障害に対する予測モデルを作成する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究協力機関である市から、市の保健医療領域及び学術領域の有識者に対し、研究計画を説明することを要請された。そのため、市の医師会、歯科医師会、薬剤師会、大学教員に研究計画の説明及び研究打ち合わせを実施する必要が生じ、調査開始が2か月遅れた。しかし、データ収集のための調査は順調に進み、予定通りのデータを収集できると考えられる。
地域在住後期高齢者に特化した低認知機能予測モデルを作成するために、地域在住後期高齢者に対して認知機能検査と生活習慣調査を継続して実施しデータ収集をする。また、健康診査結果や介護情報等のデータについても収集していく。なおスケジュールとしては、ベースライン調査を2018年8月頃に終了し、6~8か月後のフォローアップ調査を2018年11月から2019年3月にかけて実施する予定である。次年度はベースライン時収集データを中心にデータ解析をし、低認知機能予測モデルを作成する予定とする。加え、共同研究機関である延岡市にて、本研究で作成する低認知機能予測モデルを実装可能かについても、市と協議をし実装の可能性を探っていく。これにより、市町村が日常業務として収集・蓄積している情報を活用し、地域在住後期高齢者を対象とした低認知機能の予測モデルを作成するよう研究を進めていく。
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