認知症は発症すると治療が困難なため予防が重要であり、認知機能低下者の早期発見を日常業務として実施できる認知機能スクリーニングシステムの構築は急務課題である。そのため、日常業務で収集している保健医療・介護データを活用した認知機能低下の高精度予測モデルが必要である。そこで本研究は、市町村が日常業務として収集・蓄積している情報を活用し、地域在住後期高齢者を対象とした認知機能低下の予測モデルを作成することを目的とする。 宮崎県延岡市と共同研究を実施し、延岡市の地域在住後期高齢者を対象にコホートデザインにて疫学研究を実施した。延岡市が実施する後期高齢者健康診査に参加し本研究への参加同意した人の認知機能、生活習慣、健康診査結果、介護情報等々のデータを収集した。ベースライン調査は約480名、半年から一年のフォローアップ調査では約310名のデータを収集した。 予測モデルを作成するための訓練データセットと、予測モデルの精度評価をする検証データセットに分けた。加えて、認知機能検査得点のカットオフ値に基づき、対象者を認知機能障害群と正常群に群別し、これを結果変数とした。健康診査結果及び介護情報のデータを説明変数群とした。機械学習手法であるランダムフォレストやスパースモデリング等を活用し、地域在住後期高齢者を対象とした認知機能障害に対する予測モデルを作成した(AUCは0.67-0.71程度)。加えて、本研究調査で追加収集した教育歴、言語流暢性テスト、主観的聴覚低下等々の情報(現状の健康診査では収集されていない情報)を加えることで、予測精度が向上した(AUCは0.74-0.88程度)。 以上から本研究は、既存情報+簡便な追加検査の情報で、地域在住後期高齢者に特化した認知機能障害に対する予測するモデルを提示し、認知症対策の一環である認知機能低下の初期段階を早期発見するシステム構築に貢献したと考える。
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