アンモニアは穏和な条件で液化し、液化状態でのエネルギー密度が高いため、水素キャリアとして有望視されている。本研究ではアンモニアを分解し、水素を製造するための触媒開発を行った。平成30年度はCoMo系触媒の活性向上のため、担体である多孔質シリカおよびCoMo種の窒化処理を検討した。しかしながら、本研究で検討した窒化処理条件では活性種のシンタリングのために触媒活性は低下することが明らかとなった。 そこで、窒化処理に代わる手法として多孔質シリカへの塩基性物質(MgO)の修飾を検討した。多孔質シリカに1~30 wt%のMgOをワンポット合成法により修飾し、得られた材料の細孔構造を評価した。低角側のXRDパターンでは、すべてのMgO修飾量において規則的なメソ細孔に起因するピーク群が確認された。したがって、MgO修飾は多孔質シリカの規則的な細孔構造の形成を阻害しないことが明らかとなった。一方、高角側のXRDパターンではMgOに起因するピークは見られず、MgOは分散担持されていることが示唆された。なお、FT-IRスペクトルでは、多孔質シリカのSi-O-Si逆対称伸縮振動に起因する吸収バンドがMgOの修飾により低波数側へシフトした。そのため、修飾したMg種の一部がシリカ骨格へ導入されたことが示唆された。 MgO修飾量は触媒活性に影響し、少量あるいは過剰量のMgO修飾では触媒活性は低下した。一方、15 wt%のMgOを修飾することで単位触媒量あたりの水素生成速度は11 %向上した。さらに、MgO修飾の手法としてワンポット合成法を用いることで含浸法よりも高い水素生成速度が得られた。
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