研究実績の概要 |
(1) hMCT1, 4が認識するリガンドの化学的特性の解析 申請者は昨年度までの検証で、hMCT1もしくはhMCT4選択的な阻害効果を示す化合物を複数見出している。今年度はこの研究成果について学会発表を行った。
(2) hMCT1, 4の基質選択性を決定するアミノ酸残基の同定 TM8 Argよりも細胞内側の残基に着目し、これらの残基をhMCT1, 4間で置換した変異体を作製し、基質選択性の変動を評価した。いくつかの変異体で基質輸送活性が減弱していたことから、これらの残基が基質輸送に重要な役割を果たす可能性が示された。しかし、L-OPro/L-乳酸輸送クリアランス比は変動しなかったため、着目した残基が基質選択性に関与する可能性は低い。次に、単一変異導入で活性が認められた変異を全て導入した多重変異体を作製し、基質選択性に与える影響を検証した。hMCT1, 4多重変異体はその基質輸送活性がWTと比較して低下したことから、これらの残基が協調的に働き膜発現もしくは基質輸送を促進していることが示唆された。 次に、昨年度同定したhMCT1の基質選択性に重要な残基 (M69, F367) の機能について解析を行った。M69L変異体ではL-OPro/L-乳酸輸送サイクル比の低下が、F367Y変異体ではL-OPro/L-乳酸親和性比の増大が認められた。さらに、M69L/F367Y変異体では輸送サイクル比の低下と、輸送親和性比の増大の両方が認められた。これらの結果から、M69がL-OPro輸送サイクルを、F367がL-Pro親和性を調節することでhMCT1の基質選択性に寄与していることが明らかとなった。また、対応するhMCT4変異体 (hMCT4-L71M, Y332F, L71M/Y332F) についても同様の検証を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検証により、hMCT1, 4の推定基質輸送経路に存在する基質選択性に関わる残基 (M69, F367) が明らかとなり、その変異体の速度論パラメーターも得ることができた。来年度はhMCT1のM69, F367残基のどのような物理化学的特性がL-OPro選択性に関わるのか明らかとするために、hMCT1-M69X, -F367X変異体を作製し基質輸送能の変動を検証する。また、M69, F367残基と基質との相互作用を分子構造の観点から明らかとするために、L-OProアナログであるCPCおよびL-OCPCのKi値を算出し比較することで検証を行う。
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