研究課題/領域番号 |
17J00025
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安藤 祥大 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | フロキサン / 求核置換反応 / ラジカル反応 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
私は、容易なフロキサン誘導体合成法を確立するために、フロキサン環上の4位に脱離基を持つブロモフロキサン(4-Br)やトリフルオロメタンスルホニルオキシフロキサン(4-OTf)を基質として鈴木―宮浦クロスカップリングなどのカップリング反応を用いたアリール基の導入検討を行うことにした。しかしながら、4-Brや4-OTfの効率的な合成報告例は今までなかったため、これらの置換基を導入する反応の検討から始めた。 まず4-OTfは4位にニトロ基を持つフロキサンから2段階かけて高収率かつ簡便に合成できることがわかった。4-Brはフロキサン環構築反応としてよく用いられる二量化反応によって得ることができた。今後は、得られた4-OTfや4-Brを用いてカップリング反応などの条件検討を始めていく予定である。 次に、上記のカップリング反応と並行して、アリール金属種を求核剤としたフロキサン環上での求核置換反応による種々の検討を行った。まず、容易に合成できる3,4-ビス(アリールスルホニル)フロキサン(BASF)を基質として、ソフトな求核剤であるアリール亜鉛反応剤との反応を調べた。その結果、4位で反応が進行した生成物が10%で得られ、さらに副生成物として溶媒であるTHFが3位に付加した化合物も得られた。この理由が、ラジカル反応によるものだと考え、カルボン酸から炭素ラジカルを生成する手法をBASFに用いた。その結果、3位にのみ選択的にラジカル付加した生成物が良好な収率で得られることを見出した。今後は、ラジカル反応剤を用いた条件を最適化し、フロキサン環上に光増感剤ユニットや酵素との反応部位の導入を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はフロキサン環上の脱離基の導入を検討し、そこからカップリング反応等による多様な置換基の導入へと導いていく予定であった。しかし現在は、その過程で見つかった従来からの課題であるフロキサンに対して二つの異なる置換基を逐次的に導入する方法の開発を行っている。これまでの結果よりその解決のきっかけを既につかんでおり、条件の詳細な最適化を行うことで残り一年の研究により当初の目的を大きく超える成果を挙げられると考えている。本成果は、新しい医農薬品の分子骨格となる可能性があり、多くの研究者から注目される成果となると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
まずはカップリング反応によるアリール基導入の条件検討だけでなく、ラジカル反応剤を用いても条件検討を行う。これと並行してラジカル反応の条件を最適化し、フロキサン環上に望みの置換基を逐次的に導入できる方法を開発する。 最終的には、光増感剤ユニットや酵素との反応部位の導入を試み、生理学ツールとして用いることができるようなフロキサン誘導体の合成に取り組む予定である。
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