研究実績の概要 |
本研究課題では、芳香族三級アミドのcis型優先性という独自の立体特性を利用することで、らせん状、環状オリゴマーを創製し、その立体挙動の解析および分子認識能の検討を行うことを目的としている。本年度は、らせんオリゴマーについて、二級アミド結合と三重結合をリンカーにもつ2種類のオリゴマーの分子認識能を解析した。また、環状オリゴマーについては、新規大環状オリゴマーを創製し、その立体構造解析を行った。 らせんオリゴマー:これまでゲスト分子の包接現象は、誘起CDの測定により評価していたが、CD測定は低濃度で行うため包接していても観測できていない可能性があると考え、NMR測定により評価することとした。二級アミド結合をリンカーにもつタイプ1のオリゴマーに対しては、水素結合による包接を期待し、糖誘導体やアニオンを添加した。アミド結合のNHと何らかの相互作用をしていることは化学シフトの変化より示唆されたが、糖誘導体ではその変化が小さく、またアニオンの場合も会合様式は解明できなかった。三重結合をリンカーにもつタイプ2のオリゴマーに対しては、アニオン、カチオン、テルペン類を添加し、NMR測定を行った。その結果、アニオンを添加した際、化学シフトの変化が起こり、1.5巻きしていると考えられる4量体のオリゴマーで最も強く相互作用していることが示唆された。 環状オリゴマー:三級アミド結合の導入位置と数を検討し、2量体から7量体までの種々のオリゴアミドを合成した。その環化縮合反応の結果、新たに環状5, 6, 7量体を得ることに成功した。X線結晶構造解析より、それらは全て部分的にらせん構造を持ち、環状分子という構造の自由度が制限されている状況にも関わらず、らせん構造を最大化するような立体構造をとることが明らかとなった。
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