研究課題/領域番号 |
17J00073
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新里 秀平 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 時間拡張モデリング / 析出現象 / 原子モデリング / 固溶原子 / 金属間化合物 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,原子スケールの空間解像度を保ちつつ,長時間プロセスを追跡することのできる普遍的な時間拡張モデリング手法を確立するために,Diffusive Molecular Dynamics (DMD)法を多元合金材料への拡張し,その析出現象への有効性を示すことを目的とする.本年度は構築したDMD法の析出現象に対する有効性を検討するために,ニッケル‐アルミニウム(Ni-Al)合金の相安定性の評価を行なった.具体的には,Ni-Al合金系においては,Al濃度に応じてAl原子がランダムに固溶した固溶体相とAl原子が規則的に配置した規則相が現れることが知られていることから,様々な濃度,温度条件における各相の自由エネルギーを算出し,各相の安定性の評価を行った.平衡状態図を作成し,実験により得られている平衡状態図との比較を行うことで構築した手法の有効性の検討を試みたが,実験により報告されている平衡状態図が再現できていないことが確認されたため,DMD法による自由エネルギー計算理論の修正を試みた.自由エネルギー解析の結果,DMD法による相安定性の予測では規則相の安定性が過大評価されていることが分かったため,局所的な濃度の平均濃度からの偏差に着目し,偏差量に応じたペナルティを付加するように修正を行い,再度規則相および固溶体相それぞれの安定性の評価を行なった.修正したDMD法では実験により得られている状態図をよく再現することを確認できたため,構築したDMD法は析出現象のモデリングに対して有効であると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は時間拡張モデリング手法の構築および析出現象モデリングへの有効性の検討と,実際に析出現象への適用を行う予定であったが,有効性の検討にとどまっている.しかしながら,そのままでは析出現象への適用が難しいことが明らかになったDMD法に対してわずかな修正を加えるだけで析出現象への適用が可能であることを示すことができたため,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当該手法の析出現象モデリングへの有効性を示すことができたため,今後はこの手法を析出現象へ適用したモデリングを行い,析出物形成過程の解析および析出物が材料強度に与える影響の予測に取り組む.
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