研究課題
本年度は,可積分な非線型常微分・差分方程式の族と多胞体上に定義される偏差分方程式の関係について,以下の課題を中心に研究を行った.(1) 立方体上に定義される2次元偏差分方程式系(ABS方程式)と可積分な2階の非線型常微分方程式の族(パンルヴェ方程式)の関係について,格子の理論を用いた研究を行った.その結果,第4および第5パンルヴェ方程式がABS方程式からの簡約から得られること,その可積分性を保証する線型方程式が立方体上のコンシステンシーから得られること,また,立方体の超立方体への拡張がパンルヴェ方程式の高階化を引き起こすことを明らかにした.本結果は「Reduction of lattice equations to the Painleve equations: PIV and PV」の題目でJournal of Mathematical Physicsから出版された.(2) Schramm型のCircle Patternsを持つ離散冪函数が第6パンルヴェ方程式(P6)の理論から導出できることが知られている.この関係を用いて離散冪函数とABS方程式の関係についての研究を行った.その結果,離散冪函数はABS方程式とその背後にある立方体の対称性を用いて構成できること,その対称性がP6の理論から導出できること,立方体を4次元超立方体に拡張することでHexagonal Circle Patternsを持つ離散正則関数が導出できることなどが分かった.本結果の一部を「Geometric description of discrete power function associated with the sixth Painleve equation」の題目でProceedings of The Royal Society of London Series A.に投稿し受理された.
2: おおむね順調に進展している
今年度は,「立方体上に定義される2次元偏差分方程式系とパンルヴェ方程式の関係」および「パンルヴェ方程式に付随する離散正則関数と立方体上に定義される2次元偏差分方程式系との対応」について研究に取り組み,これらの結果をまとめて2本の論文を出版することが出来た.また,これらの内容について国外の研究集会で3回の講演を行なった.
離散パンルヴェ方程式は初期値空間と呼ばれる有理曲面により分類されることが知られている.今年度の研究ではその分類の中で上位の曲面であるA2型の加法型離散パンルヴェ方程式(以下,δ-P(A2)とよぶ)と多胞体上に定義される偏差分方程式の関係についても考察した.その結果,δ-P(A2)は立方体ではなく立方八面体上に定義される偏差分方程式の簡約から導出できることが明らかになった.立方八面体上の偏差分方程式の理論はまだ整備されていないため,来年度は引き続き立方八面体上の偏差分方程式の分類,可積分性などについての研究を行っていく予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Journal of Mathematical Physics
巻: 59 ページ: 022702~022702
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Symmetries and Integrability of Difference Equations
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Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Science
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